第3話

「少し散らかってますが気にしないでください」



「こんなに充実してる…死にたい人間の部屋には思えない」



「えぇ、僕には自殺願望なんてありませんから」



「え?」



「申し遅れました。僕は平良麻央。精神科医です」



「精神科医…」



「えぇ、僕は知りたいんです。自殺願望者の心理とやらを」



「騙したんですか」



「まぁそうなりますね。ところでお名前を伺っても?」



「岳来夢」



「来夢くんですか」



「そうですけど」



「では来夢くん。いくつかクエスチョンに答えてください」



「…いくらでもどうぞ」




僕に押されて渋々といったような様子だ




「なぜ自殺を?」



「世界に飽きた」




中二病といったワードが頭をよぎる




「世界とは?」



「多様性のある世界ばかり目指しているのに実際のところ求められる人間は金太郎飴のような存在。自由でいられないこの世界は僕にとって孤独でしかなかったから」



「そう、か」



またもや絶句した。彼は正しい人間であった

この間違った世界からはみ出した正常者であったのだ。

僕たちは一体何を基準に正と負を選り分けているのだろう。

何をもってして彼が負の人間であると定義づけるのだろうか。



あぁ、頭が痛い。今にも割れそうだ。

世界の矛盾に気がついた今僕は同時に己が世界に汚染されていることに気づいた。

それは奇しくも催眠に近い。



「君の家族は?」



「僕に家族はいません。施設育ちだから」



「今まで生活は?」



「体を売ってた」



「……そうか」





「ねぇ君、僕と一緒に住んでよ」



「………は?」



「僕は君の観察がしたい。君はいてくれるだけでいい。僕が君を養ってあげるよ。」



「何のメリットが?」



「僕という概念の浄化」



「は?」



「わからなくていいよ」



「君は実に興味深いんだ」



「はぁ」



「自殺は延期だ」



「嫌だ、は通じなさそうですね」



「物分かりがよくて助かるよ」




こうして僕と彼の同居生活が始まった。

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自殺願望者 ヒデ @hide052999

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