7章 二人の発見者と逃亡者

第65話 コレットの書~発見者・1~

 ◇◆アース歴200年 6月17日・朝◇◆


「はぁ……」


 気が重い。

 昨日の事があったから受付嬢……いやキャシーさんか、にすごく会いにくい。

 まぁこれは私だけの問題なんだけどね……ふぅ、こんな入り口にいても仕方ない。


「……いざ、中へ!」


《ガヤガヤ》


 あれ? 今日は他の冒険者さん達が多いような気がするんだけど、気のせいかな。

 まぁ今はそんな事どうでもいいや、まずはキャシーさんはっと……いた。


「…………おはよう……ございます」


「あ、コレットさん。おはようございます」


 ……付けているプレートにキャシー・エヴァンって名前がちゃんと書いてある。

 何で私はこれを見落とすかな、もしかしたらケビンさんもどこかで見落としていたんじゃないかって今心配になってきた。


「ちょうど良かった、実は……って、どうかしたんですか。じっと私を見ていますけど……あ、どこか服装でおかしなとこがありましたか!?」


 ハッ! しまった、つい凝視してしまった。


「いっいえ、違うんです! え~とですね……その~キャシーさん!」


「はっはい。急に名前? ……あの、本当にどうしたんですか?」


 今までの失礼な事を、ちゃんと話しておかないと。


「え~と……実は、ですね……」



「――と言う訳なんです! 本当にごめんなさい!」


「……」


 キャシーさんが無言だ……やっぱり怒っちゃったかな。


「――プッ、アハハハハ!」


 えっ!? なんか笑ってるし!


「あっごめんなさい。すごく真剣な顔をしていたので何事かと思っていたら、予想外な理由でつい……フフ」


 だからって笑い事でもないような。


「ふぅ……私はそんな事、別に気にしませんよ。ですからコレットさんも気に病まないで下さい」


 そう言われても……。

 ん~でも、これ以上あれやこれや言うのも……。


「でっでも、これからはちゃんと名前で呼びますからね!」


「あはは、ありがとうございます。――っとそうだった。コレットさん、お話が変わるのですがちょっとお聞きたい事があるんです。お時間はありますか?」


 聞きたい事? そういえば挨拶の時に何か言いかけていたっけ。

 なんだか悪い事しちゃったな。


「はい。時間に問題ありませんけど、何ですか?」


「それは良かった。……では、こちらに来ていただけますか?」


「はあ……」


 こちらって、何処行くんだろ。



 ギルドの2階にある個室に通されたけど……。

 キャシーさんと二人っきり、一体何の話をするんだろう。


「すみません、コレットさん。事情によりこの部屋でお話をさせてください」


「はあ……」


 部屋にって事は、周りの人に聞かれてはいけない話って事かな。

 なんだか緊張してきた。


「昨日、グレイさんから報告のあったコアの件なのですが――」


 コアの件って、聞かれてはいけないほどの重要な物だったの!?

 グレイさんは直接、親父さんの所に持って行ったから何も思わなかったわ!


「あわわ! ごごごごめんなさい!! 勝手に使っちゃいました!!」


 なんか今日は謝ってばっかりなきがする。


「え? ちょっとコレットさん、何で謝る必要があるんですか? ギルドの依頼で受けた対象物は勝手に使ったり売ったりするのは困りますけど、それ以外に手に入れたものは冒険者さん達の自由ですから」


 へっ? そうなの……? あ~良かった……。


「えと、それじゃ一体……」


「まずこれを見ていただけますか、グレイさんの報告書なんですが」


 報告書?


「――はい、わかりました」


 ふむふむ、なるほど。

 昨日の事を細かく書いてあるわね。

 ドラゴニュートの事、魔晶石の部屋の惨事、そしてコアの事。


「その報告書に、間違いの箇所はありませんか?」


 ? 何でそんな事を私に聞くんだろ。

 グレイさんの報告なら私が確認しなくてもいい気がするんだけど。


「はい、間違いはないです。昨日の事はこの報告書の通りです」


「そうですか……ふーむ……」


 キャシーさんが何か考え込んでいる。

 ん~? やっぱり変な所はないんだけどな。


「……よし、ちょっと待っていてくださいね」


 ――ガチャ


「えっ? あっちょっと――」


「――すぐ戻りますから」


 ――バタン


 出て行っちゃった。



 すぐ戻るって言ったのに、結構時間立つけど……どうしたのかな。


 ――ガチャ


 お、戻ってきた。


「お待たせしちゃって、すみません! 必要な物を集めていたら時間がかかっちゃいました!」


 うわ、すごい数の本と紙の束をもってき――。


「失礼するですな」


 ……ですな?

 どこかで聞き覚えが……って!


「何でジゴロ所長がここに!?」


「む? 私はエフゴロといいますな、ジゴロは父ですな」


 へっ息子さん!?

 でも、アフロヘアーのまん丸メガネをかけてたちっこいおじさんって。


「いや、どう見てもジゴロ所長さんじゃないですか!」


「よく言われるですな。しかし私の髪を見るですな、父よりも若いぶんフッサフサですな」


 そんなのわかりませんって。


「コレットさん、本当に息子さんなんです。エフゴロさんはモンスター専属の研究者です」


 キャシーさんが言うんだから本当なんだろうけど、もはや親子というより双子レベルじゃん。


「という訳でよろしくですな。ではさっそく……キャシー氏、報告にあったスケルトン種をレア・スケルトンと仮名しますですな」


「レア・スケルトン?」


「そうですな! 報告にあったスケルトン達は今までにない行動をしているですな、つまり新種が出てきたというわけですな! そこで発見者のコレット氏にこのレア・スケルトン達について質問をするので答えてほしいですな!!」


 あれ? この流れって……。


「まず報告書によれば、以前からコレット氏が白竜の遺跡に出てくるスケルトンは色々とおかしい行動をしている、この事に間違いはないですな?」


「あ、はい……」


 もしかしなくても……。


「なるほどですな。では、どの様におかしかったのかを細かく説明を――」


 やっぱり質問地獄が始まったし!!

 ――そうか! 個室に入れられたのは外に聞かれるからじゃなくて、私が逃げられないようする為だったんだ!!

 キャシーさんひどいですよおおおおおお!!

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