第66話 コレットの書~発見者・2~

 ◇◆アース歴200年 6月17日・昼◇◆


「――以上が……私の……経験した……事……全部で……す……」


 つっ疲れた……また、この展開になるなんて思いもしなかったわ。


「なるほど、なるほど。――よし、聞きたい事は以上ですな、ご協力感謝しますですな」


 まぁキャシーさんがいてくれたおかげで、エフゴロさんの話がまだすんなり終わった方ね。

 ジゴロ所長さんの時なんて、それはもう酷かったし……。


「お疲れ様です、コレットさん」


「あい~~~」


 それでも喋りすぎて、喉が痛いわ。


「あ~やっぱり喉が痛そうですね。――だったらこれを飲んでください」


 そういってキャシーさんがコップに注いだのは、濃い緑色の液体。

 これってまさか……。


「これを飲めば、喉の痛みがすぐ取れますよ」


 やっぱり! ジゴロ所長さんの時に飲んだ、あの苦い飲み物じゃない!


「あっこんな見た目ですが大丈夫です! 喉の痛みを和らげる効果がある飲み物ですよ。ジゴロ所長より効果の実証も出ていますから安心して飲んでください」


 はい、存じております、効果も、味も方も……。

 というか、その効果の実証を出したのってどう考えても私だよね?

 ……とは言え、のどが痛いままなのは嫌だし、効果は身を持って知っているし……しかたないか。


「……それじゃ、いただき……ます。――ウグッ!」


 うん、何一つ変わらず……苦いまま!!

 少しは甘くするとか改良してほしいな、これ。


「……私が言うのもなんですが……コレットさん、良くこれを一気に飲めましたね……」


「……ええ、まぁこのくらいなら……ウプ」


 のどが痛いから、仕方なく飲んだだけなんだけどね。

 普段の時は絶対飲みたくはない。


「(……ふ~む、いたって普通の反応ね。これなら商品化しても問題なさそうだわ)」


 ん? 今キャシーが何か呟いたような。


「キャシーさん、何か言いました?」


「え? いいえ、何も言っていませんよ?」


 いつもの笑顔のキャシーさん……のはずなのに目が笑ってないような。

 ジゴロ所長さんの時もそうだったけど、耳が詰まっているのかしら? 後で耳かきでも買おうっと……。


「申し訳ないのですが、キャシー氏のまとめた資料を見せてもらえますかな」


「あっはい、ちょっと待ってくださいね。――コレットさんは休んでいてください」


 言われなくても休ませていただきます、ふぅ……窓からの日の差込具合から見てもうお昼くらいか。

 通りでお腹が空いているわけね、う~ん……お昼は何食べようかな……。


「はい、どうぞ」


「ありがとうですな。うーん……それにしても聞いた話をまとめると、これはまた多種多様ですな……」


「そうですね……コレットさんと出会ったスケルトンは普通のとは明らかに違いますから、まさに《レア種》ですね」


 そうだな~お金も入った事だし、たまには贅沢してレアのステーキもありかな……。


「剣を拾ってゾンビを斬った、ナイフを拾って襲ってきた、魔晶花を取って持っていた、宝箱の中に入ってコアを持っていた……この拾った物を使うというのは今までのスケルトンにはなかったことですな……」


 それとも節約の為にパンに肉と野菜を挟んで、外の広場でゆっくりと食べるのもいいかも。


「はい、今までそんな報告何てありませんでした……レア・スケルトン、そしてドラゴニュートも居ましたし、あの遺跡で何か起きているんですかね?」


 あ、でもグレイさんを待つならギルド内にいた方がいいか。


「今の所ははっきりと言えないですな……ただ宝箱の中に入ってコアを持っていた恐ろしく硬いスケルトンは今後危険になるかもしれないですな」


 となると、やっぱりギルドの中で食べないといけないか。


「そうですね、他のタイプは鈍器等でバラバラになって倒されているのに対して、そのレア・スケルトンだけは爆発をもろに受けても、形を保ったまま柱に埋まったそうですからね」


 そういえば、ここのサイコロステーキが絶品ってグレイさん言っていたっけ。


「……これは憶測になるですな、もしかしたらレア・スケルトン種は魔晶石の部屋の魔力で生まれたいう可能性もあるですな」


「なるほど……もしその推測が合っていれば、魔晶石の部屋は崩れたのでこれ以上レア・スケルトンは出てこないかもしれないという訳ですか……」


「ですな……しかし、それまでに生まれているのがいた場合はまだ遺跡をうろついているかもですな」


 2人の会話を流し聞きしいてたけど、質問の後は私がここにいる必要はまったくないような気がする。


「そうですね、では早急に支部長に報告に行きましょう」


「ですな」


 お、この流れは終わったみたい。

 2人が立ち上がって急ぎ足で扉の前へ行って……。


「では、コレットさん、お疲れ様でした!」

「では、コレット氏、感謝ですな!」


「え? あ、は――」


 ――ガチャ! ダダダダダッ!!


「――い」


 ……って! 私を置いたまま、2人してダッシュでどっか行っちゃったし!

 まったく、せめてドアくらい閉めて行ってほし――。


《ぐがああああああああああ!》


 えっ!? 何? 何の音!?


《ぐおおおおおおおおおおお!》


 違うこれは、音じゃない、鳴声?


《ぐがああああああああああ!》


 隣の部屋から聞こえる……もしかしてモンスター!?

 え? でも何でギルドにモンスターがいるわけ?


《ぐがああああああああああ!》


 もっもしかして、これってギルドの闇って奴じゃ……?

 気になる、でも怖い、けど気になる、でも怖い。


「どうしよう……」


《ぐおおおおおおおおおおお!》


「――っ!」


 う~~~やっぱり気になる!

 よし、鍵穴から部屋の中の様子を見てみよう……そして危険と判断したらすぐに逃げよう。


「……ジー」


《ぐがあああああああああああ!》


 あれ? モンスター何ていないし?

 いるのは長いすに寝転がっているおじさんが1人……って、あの人は――。


 ――ガチャ!


「グレイさん! なんで、この部屋で寝ているんですか!?」


 しかも鎧を着たままだし!

 良く、それで寝られるわね。


《ぐがあああああああああああ!》


「グレイさん!! 起きて下さい!!」


「――んがっ! ……何だうるぇせな……ん? コレット……? 何でここに?」


 目が半開きだし、無精ひげだし、唾がたれているし、寝癖付いているし。


「それでいいのか四つ星級……」

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