第36話 ケビンの書~接触・4~

『うわっ!』


「きゃっ!」


 ああっ! 勢いのせいでコレットを離してしまった。

 大丈夫か? 怪我なんてしてないよな?


「いった~……もう何なのよ……」


 良かった、普通に立ち上がった。何処も怪我していないみたいだ。

 ……それにしてもやったぞ、等々コレットと2人きりになれた!!

 ああ、心臓がドキドキいってる……気がする。


「ここは何処……え?」


『……あ』


 コレットと目が合ってしまった、ここは何か喋りかけた方がいいよな。

 となると第一声が大事だよな、落ち着け俺……ふぅ、よし!


『ココココココココココッレチョ!』


 ……………………。


 うわぁああああああああ!

 緊張のあまりにまともに喋れなかったし! 舌ないのに噛んだし! もう最悪だ!!

 恥ずかしい、穴があった入りたい。


「――っ!?」


 どうしたんだろ、コレットが自分の体をあちこち触ってるが。


「…………」


 そして青ざめて落ち込んでる、何か落し物でもしたのかな?

 それなら一緒に探して――。


「――っ!!」


 ……え? コレットが付けていたフランジメイスを手に取ってこっちに向けて来た。

 おかしいな、メッセージで俺が無害のスケルトンだと判ってるはずなんだが……。

 もしかして、この薄暗さとさっきのまともに喋れなかったせいで俺が普通のスケルトンと間違えられてる?

 それは困ったな……そうだ、この花を渡せば判ってくれるはず。


『コレット、この花を君に――』


「くっ来るならこい! このモンスター共!」


 コレット!? 何で花を出しただけでそんなに敵意を出しまくってるの!?

 露骨にモンスター呼ばわりなんて酷い!

 ――って、ん? 今モンスター「共」って言ったよな、ここにいるのは俺とコレットの2人だけのはず……。


「グルルルル……」


 何か……背後からうなり声が聞こえたような。


『――え? 何だこれ……?』


 背後にはうごめく巨大な物体が。

 それは、全身を覆う夜のような群青色の毛が生えてて、口から鋭い歯が見える……形的に犬?

 いや、どう考えても犬じゃないよなこれ、だっていくらなんでも体格が大きすぎる、数人が乗れる馬車並みにデカイ。特徴を見る限りこいつは狼系の魔獣――。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!」


『ダイアウルフじゃねぇか!!』


 どうして、この部屋にダイアウルフがいるんだよ!? コレットと2人きりになるのに誂え向きの部屋のはずだろ!!

 こんな危険な魔獣がいる部屋なんかに入れやがって、あのバカドラゴニュート!


「ひいっ!」


 ――っ、コレットが怯えてる。そりゃそうだ、こんな大きな魔獣を見たらそうなるよな。

 正直、俺も怖い……というかこいつ俺の方ばかり見てる気がするが気のせいだろうか。

 まぁそんな事はどうでもいい、俺の後ろには大切な人がいるんだからな。


『コレットは、俺が守ってみせる! だから安心するんだ!』


 フッ、決まっ――。


「えいっ!」


 ――パカーン!


『――へっ?』


 え、何が起こった?

 強い衝撃を受けて俺の体が突然バラバラになっ……た?


「はぁはぁ……」


 もしかして、俺はコレットにあのメイスで殴られた……のか?

 バラバラになっても意識があるって事は能力アップはまだ続いてる証拠だよな、なのにコレットの一撃で何故こうなってしまったんだ……。

 いや、それよりもどうしてコレットが俺を殴り飛ばしたんだ?


「よし、これを――」


 あ、俺の骨を拾った。

 どうする気だ?


「ほっほ~ら、おいしい……のかな。まぁいいや、骨よ~ほしいでしょ~」


 ……俺の体がエサにされてるよ!! それはさすがに酷くないか、コレットさん!

 それに自分で言うのもなんだが、俺の骨如きでダイアウルフが大人しくなるとは――。


「ヘッヘッヘッ」


 何かめっちゃ尻尾を振って喜んでるしー!!


「そ~ら、取ってこ~い!」


 ちょっ俺の骨を投げちゃった!


「ワフッ!」


 お前も取り行くなよ!! そんなでかい図体して何がワフッだよ!

 なんか色々おかしいぞ、この状況!


《なっドラゴニュート! 何しに戻ってきた!?》


《ええい! 今はそんな事どうでもいいのじゃ、そこを退くのじゃ!》


 あん? 何だか外が騒がしいな。

 ……あ、扉が開いた。


「おい! 無事――なのか? バラバラになっておるようじゃが……」


 入ってきたのはナシャータ!


「コレット無事か!?」


 と、コレットに引っ付いていた男2人……。


「無事みたいで良かったっスねーって、何っスか! あのでかい獣は!?」


「あいつは……ダイアウルフか、何でこんな奴までいるんだ。――チッ、コレット逃げるぞ! 早くこっちにこい!」


「あ、はい!」


 コレットがおっさん達のとこへ行ってしまう。

 でも、この状態じゃ追いかけられないし!


『コレットを止めろ! ナシャータ!!』


「わかったの――じゃあ!?」


 ナシャータがダイアウルフに襲われたし!


『大丈夫か! ナシャー……』


「おい、そんなでかい図体でわしに乗っかるな――うわっ舐めるのはやめるのじゃ、うひゃひゃひゃくすぐったい!! っいい加減にするのじゃ! 放すのじゃポチ!」


『……タ!?』


 は? ポチ? あの魔獣がポチ!?

 もしかしてナシャータはあの魔獣に襲われてるんじゃなくて、ただただあの魔獣にじゃれられているのか。


「――よくわからんが今がチャンスだ、ドラゴニュートがダイアウルフに襲ってるうちに逃げるぞ! 2人とも転送石を起動させるんだ!」


「はい!」


「うっス!」


『あ、ちょっと待ってくれコレッ――』


「「「転送石起動!」」」


 ああ……コレットが行ってしまった。

 くそっどうしてうまい事いかないんだ……コレットは遺跡には来てくれるのに結局、邪魔が入ったりしてコレットが町へ戻る事に。

 今日は2人きりになれたというのに……本当に悔やまれる。


「あひゃひゃひゃ! 本当にいい加減にするのじゃ、ポチ!」


『…………』


 体が再生したら覚えてろよ、唾だらけのドラゴニュート。

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