赤い事故物件
二枚貝 狭霧
プロローグ
受験も終わり、すっきりとした気分で
家に帰った僕を待ち受けていたのは
両親の悲痛な声だった。
「一樹、大変よ!」
「どうしたの、母さん。」
いつにも増して慌てている母さんの前で
ぼんやりと立っていると、襟首を掴まれて
家の裏に連れて行かれた。
「ほら、見て!」
そう言われ、とっさに見たのは家の壁。
木の板が所々黒い何かで汚れて、
触れるのだけはご勘弁願いたい所だ。
「そっちじゃないでしょ!こっちよ!」
母さんが、僕の頭を抑えて左を向ける。
そこには水道官がある。のだけど…
現在進行形で水がパイプから吹き出し、
そこら中に溢れ出ていた。
「ええっと…」
どういう反応をすればいいのか
分からなくてぽかんとしていたら、
母さんが同じような顔をして
こっちを見てくる。
「驚かないの?」
だって破裂したんだよ?と
“破裂”の所にアクセントを付けながら
母さんが言う。
「もっと、『えぇ!』とか、
『わぁ!』とか言わないの?
そりゃあ、一樹が昔からそう言うのに
驚かないのは知ってるけど…」
それは母さんが過剰なだけだよ、とは
とても言えない。
確かに、僕が皆からはちょっとずれている
って言うのは分かるけど。
それじゃあ、変人みたいじゃないか。
去年、一人暮らしを始めた姉の方が
よっぽど変なのに。
一瞬、部屋中にオカルト本を散乱させた
姉の部屋が脳裏をよぎった。
「はぁ…まったく、誰に似たのかしら。」
母さんの口癖を聞きながら、
僕は腕からするりと抜け出した。
僕の名前は 加藤一樹。
テストの点も、成績も普通。
どこにでもいるような平凡な中学生
それが僕だ。
だけど、僕は一つ勘違いをいていた。
平凡な高校生の周りは、
必ずしも普通とは限らないのだから─
赤い事故物件 二枚貝 狭霧 @nimaigai
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