生きながらえる

ヘルツ博士

生きながらえる

何もない天井


じわりじわりと流れる雲


鼻に感じる空気の抜ける音


見慣れた液体の入った袋が5袋


私は生きている


体は管にまみれ


腕は半分までしぼみ


足は地面を嫌う


リモコンを押す気力などとうに失い


寝かしつけられた人形を演じているかのように


口は殺された声を必死に訴えようとする


生きながらえる


この肉体から解放されることを


何も知らない者が必死に止める


生の歓びは 生を以て感じる


私は生きながらえなくてはならない


私から伸びる管が1本残らず外れて


この肉体から解放されるその時まで

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生きながらえる ヘルツ博士 @Hakase10Hz

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