第28話 結菜VS京、修兵を巡って

誕生日は粛々と進められて終わった。

この話は翌日の事で有る。

俺は今現在、学校から帰宅して胃痛に耐えながら恐怖のあまり正座している。


胃の中で小人が暴れまわっている様な痛さ。

斧で胃壁をぶった切られている様な。

そんな俺の目の前には目を三角形にした様な京が居る。


「何でお兄ちゃんの周りって女ばかりなの。誕生日の時に言い損ねたけど」


「.....それは分からん。って言うか、今言うなよ」


「いや、今言わせてもらうけど」


マジに何で今.....。

俺は頭に手を添えながら、盛大にため息を吐いた。

簡単に言うなら溜息と一緒に何か出そう。

そんな感じだ。


「.....お兄ちゃんは私が嫌い?」


「.....何故そうなる。俺がお前を嫌いだなんて.....」


「.....じゃあ、今私がセッ●スしたいって言ったらしてくれる?」


ちょ、え?

何言ってんのこの人。

俺は衝撃に見開いて京を見る。

注意しようと思ったのだが。


見た事も無い様な悲しげな表情をしている。

何だか不安げな、悲しげな。

そんな感じ。

簡単に表現するなら.....何処ぞの檻に放り込まれた動物の不安げな感じだ。


「.....京.....?」


「.....私は凄く不安。何が不安かって.....お兄ちゃんが取られちゃうって.....」


弱々しい感じで怯える様に話す。

京が今までそんな弱音は吐いた事が無かった。

俺は驚愕しながら、京を見る。

そして.....思った。


京はそれなりに変わっていってるんだな.....と。

俺は嬉しく思うより。

何と言うか.....いや。

やっぱり嬉しいんだろうな。


「.....京」


「.....何」


「.....俺は.....誰のモノにもならない。だから.....今は安心しろ。何故かと言うと.....俺は今はそんな事をしている暇は無いと思うから」


「.....」


思いっきり顔が明るくなった。

起伏が激しいなコイツ。

俺は苦笑いを浮かべながら、京を見つめる。


誕生日とかそんな経験をして。

少なくとも今は恋人なんて作っている暇は無い気がしたんだ。

京の為とかじゃ無い。

自分の将来の為だ。


今の日本を見ていれば分かるかも知れない。

生きていく為には.....資格が要る。

だから俺は付き合えない。


「でもお兄ちゃん。結菜さんとは付き合っていたんだよね?」


「.....」


「.....ふーん.....」


視線がクソ痛いです。

確かにそうだけど、それも10年近く前!!!

もう時効で良いだろ!?


俺は冷や汗をかきながら、正座をした。

そして説教を受ける。



「誕生日.....上手く行って良かった」


終わった後にそう思った。

何でかって言うと。

京が.....喜んでいたから、だ。

やって良かったと心の底から思う。


例え上っ面でも.....だ。

喜ぶのが一番だと思うし。


「.....」


母の日も来る。

5月15日に、だ。

そして中間考査も有る。

イベント満載だな。


「.....テストめんどいな.....」


勉強をしないといけない。

俺は思い、起き上がる。

そしてベッドにスマホを投げ捨ててから。


教科書、ノートを広げた。

シャー芯も有る。

よし、勉強勉強!

集中を皿を作る様に研ぎ澄まし.....


プルルルル!


「ってオイコラ!勉強.....ん?電話.....」


俺は目を三角形にしながら思うが。

俺に電話って誰だよ。

その様に思いながら、見つめる。

結菜で有る。


「.....もしもし?どうした?」


『もしもし。修兵』


「あー、どうした?.....ってか、今日は有難うな」


『うん、大丈夫だよ。こっちこそ有難う。.....楽しかったから』


何の電話だろうか。

俺は耳元に電話を添えながら、教科書を見る。

そしてノートを開いた。


『え、えっとね、修兵。.....えっとね.....』


「.....どうした?」


『映画館.....アニメ映画とか興味有る?』


「.....内容にもよるが。でも.....興味有るな。それがどうした」


実はね.....アニメ映画のペアチケットが当たって.....当たって.....と話す結菜。

おー、マジかと俺は話した。

ペアチケットが当たるってすげぇな。

懸賞とか当たった事無いんだけど。


『その.....一緒に来て下さい』


「え?.....えっと?友達誘えば良いじゃねーか」


『何?私と一緒が嫌なの?って言うか、このチケット男女じゃ無いと使えないんだ』


どういうチケットだ。

俺は眉を顰めて思った。

いや、だって。


男女のペアチケットって。

俺は赤面しながら頬を掻く。

何だか恥ずかしいな。


「.....分かった」


『あのね!デートじゃ無いから!』


デートに見えても仕方が無い。

俺はその様に考えながら、真正面を見た。

マジで恥ずかしい。


『でねその.....映画の内容なんだけど、恋愛映画なんだ』


「.....思いっきりデートじゃねーか」


『違うし!』


何が違うのか。

俺はため息を吐いて、窓を見る。

そして青ざめた。


「.....お兄ちゃん.....」


「.....よ、よう。京.....」


「.....何やっているの?」


「.....何も?」


ふーん、嘘を吐くんだね。

あ、駄目だ。

お命頂戴だわこれと思いつつ冷や汗を流す。

そうしていると、京がとんでもない事を言い出した。


「.....私も懸賞で当たったからその話をしに来たんだけど.....」


「.....は?」


『え?何の懸賞!?』


声が上ずってマイクから聞こえる。

俺はビックリしながら、画面を見た。


「〇〇懸賞」


え.....それって私も当たった.....と、言う結菜。

は?マジで?


俺はスマホを見て目を丸くする。

京も目を丸くした。

それから、へぇ、と怪しげに笑む。


「.....じゃあ、良い機会だから.....私か結菜さん。どっちをお兄ちゃんが選ぶか.....決闘しないですか?.....結菜さん」


『.....え?.....あ.....良いよ。やろうか』


「え?俺の意見は?」


怪しく笑んでいる様な声を上げる結菜.....って何二人で勝手に決めてんのよ。

俺の意見も尊重して下さい。

その様に思いながら、顔を引き攣らせた。

日付はいつだよ、オイ。

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ヤンツン姫と俺の日々 〜ヤンデレの癖にツンデレの姫〜  アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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