第27話 京の誕生日

結論から言って。

義妹、京の誕生日。

通称ヤンツン姫のネジが飛んだままその日になってしまった。

なんてこった。

今の京はブレーキの効かない暴走電車の様な感じなんだが。


バースデーケーキは近所のケーキ屋で買って来たのは良い。

俺のプレゼントもギリギリでしっかり用意した。

のだが.....。


目の前で肉食動物が闘っている様な光景が。

止めてほしいんだけど。

俺は顔を引き攣らせながら、眺める。


「.....食べて下さい.....」


「.....其れは此方のセリフです.....!」


自宅内にて。

何をやっているかって?


簡単に言えば仲直り。

鈴華と京の、だ。


何をしているかと言えば、お互いにフォークを使いケーキを刺して、口元に添えて立っている。

火花散らして、だ。

いや、なんだこの光景.....。


「あのなお前ら.....」


「鈴華.....」


「「コイツ(この方)にケーキを食べさせたい(のです)!」」


仲直りの印がこれかよ。

何をやってんだよマジに。

其れ以外に仲直りの方法無いんか?

俺は苦笑しながら、見つめる。


横では蜜柑と結菜が苦笑いを浮かべていた。

その姿を見て改めて溜息を吐く。


取り敢えずお前ら、誕生日会が進まないだろ。

かれこれ30分はそのままだろうよ。

これで良いのかよ?


「.....ぷ、プレゼントを渡そう!」


「そ、そうだナ」


そんな感じで溜息を吐いていると。

割り込む様に話す結菜と蜜柑。

二人は嫌々ながらもその言葉に耳を傾けたのか、動きが止まる。

ああ良かった.....。


どうなるかと思ったぞ。

この二人、放って置いたらマジで地球が核爆弾か何かで終わるまでやってそうだ。

全くもう、ハァ.....。

俺は仕方が無いと立ち上がってから。


「.....じゃあ握手しろ。それで仲直りで」


「.....うん、分かった」


「分かりました.....」


お互いに見つめ合いながらその様に話す。

取り敢えずそれなら問題無いだろう。

俺はその様に考えて二人の手を掴んで握手させた。


お互いにポリポリ掻きあって。

そして恥ずかしがりながら、握手する。

その光景を見つつ、立っていると鈴鹿が何か取り出した。


「.....これ、謝った後に.....渡そうと思いました。今渡します」


「.....え.....これ.....」


それは緑色の袋のプレゼントだった。

恥ずかしがりながら鈴華は両手で渡す。

俺はそれを見て、笑みを浮かべる。

鈴華.....。


「.....ああ、有難うな。鈴華」


「.....」


京は納得がいかない様子だったが、頭を下げた。

そしてお礼を言って受け取る。

それを皮切りに次々とプレゼントを渡す皆んな。

俺もプレゼントを取り出した。


「はい」


「お誕生日おめでとう」


「お誕生日おめでとう御座います」


京はみんなからプレゼントを貰いながら戸惑っていた。

こんな目に逢うのが初めてなのだろう。

俺は静かに京を見据える。


「.....お、お兄ちゃん.....どうしたら?」


「ああ、こう言う時はお礼を言うべきだ。お前の為に用意してくれたんだからな」


「.....でも私は.....」


「.....お礼は大切だぞ」


俺はその様に微笑む様に話す。

それからそれを渡した。

何を渡したかと言えば、プレゼントだ。


俺が最後みたいだから、締めの様な感じで、だ。

京は目を丸くして穏やかな表情を浮かべた。

まるで遊園地にやって来た幼子の様に。


「.....私は.....幸せだね.....」


「.....そうだな」


プレゼントを全部抱きしめた。

それから、外側を静かに開ける。

その中には。


先ず、鈴華。

鈴華は簡単に言えばペンダントだった。

よく見れば鈴華も同じペンダントをしている。


そして笑んでいた。

粋な事をするね。


「.....有難う。鈴華」


「.....そうですね」


次のプレゼントに移る。

結菜のプレゼントだ。

ピンク色の袋の中には.....。


「.....これ.....」


「.....手作りだよ。マフラー。ちょっと時期が過ぎちゃったけど.....ごめんね」


「.....」


手作りの品か。

コイツにとっては初めてだろうな.....。

俺は感慨深く思いながら、京を見る。


胸に押し込んで、そしてほんわかな表情になっている。

俺はその姿を見て柔和になった。


「.....ありが.....とう」


「.....うん」


色々有ったしな。

こうなるのも.....うん、納得出来るけどな。

俺はその様に思いながら、見つめる。


「.....じゃあ」


次のプレゼントは蜜柑。

小さな蜜柑色の箱を開けると、中にはブレスレッドが入っていた。

俺は蜜柑らしいな.....と思う。


可愛いくて少しクールな感じの色合いのペンダントだからだ。

つまり簡単に言えば、青色の石がはめ込まれたペンダント。


「.....有難う.....です」


「.....うん。気にするなヨ」


「.....」


そして花梨の緑の箱のプレゼント。

花束だった。

所謂.....アレだ。


加工された花束.....名前が出て来ないけど。

それを見て都は頭を下げてお礼を話す。


「.....有難うです」


「.....いえ、大丈夫ですよ」


頭を上げてから遂に俺のプレゼントになる。

俺は緊張しながら、見つめる。

そして開けると中には。


「.....これ.....」


「.....それが俺の.....お前へのプレゼントだ」


俺は真剣な顔で見つめる。

京の母親の写真の入ったロケットペンダントだ。

これまで.....京は母親の写真をあまり見た事が無いのだ。

何故かと言われると.....京が捨てた。


ガラスを壊すなどの感情的になって、だ。

俺は静かに.....京を見据える。

これしか思い付かなかった俺も如何なものかと思うのだが。

すると、京は涙を流した。


「.....有難う.....見つけてくれて.....お兄ちゃん」


「.....ああ」


俺達は静かに見つめる。

京は.....涙をひたすらに流した。

その光景を.....止めれない。


何故かと言われたら俺も泣いていたから、だ。

苦労したよな、マジに。

ここまで来るのに。

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