2

「はぁ~」


「どうしたの? ミナ」


「んっ…。中学時代の友達のお葬式って、行くの結構辛いなぁって思って」


 マカとミナは制服姿で、アキとユマの葬式の行列に並んでいた。


 二人は生前仲が良く、死んだ時期が近いことから、学校近くの葬祭会館で合同の葬式になった。


 今日も学校は休みで、葬式は自由参加だったが、来ている者は多かった。


「そうだね…。ミナはアキ達と仲良かったみたいだしね」


「中学時代はね。最近じゃ全然話してなかったしぃ」


 話しながら、自分達の番がきた。


 焼香ではなく、色とりどりの花を、二人の写真の前に置かれた台に置くというものだった。


 大きなパネルに入れられた二人の写真は、満面の笑顔だった。


 マカとミナは二本ずつ花を取り、一本ずつ置いていく。


 マカはアキの写真の前で立ち止まった。


 …アレから調べてみたのだが、アキのことで少々引っ掛かっていた。


 アキはあの儀式を行う数日前に、一人の少年と知り合っていたらしい。


 その人物はいつも黒い服装で、深くフードを被っている。


 そしてその口元にはいつも笑みが浮かんでいたそうだ。


 アキはその少年と仲が良かった。


 しかしそのことを知っている者達は、その少年が誰なのか、誰一人として知る者はいなかった。


 いつもアキとつるんでいて、他の者とは軽く一言交わすぐらいで、名前も顔も知らないと言う。


 そして今日。


 もしかしたら来ているかもしれないと思ったが、…どうやら来ていないらしい。


 おそらく、その人物が儀式のことを教えたのだろう。


 儀式によって起こされる恐怖を教えぬまま…。


 あの儀式はあのままいけば、フーカとミナは黒き手に殺されていた。


 そして気は暴走し、あの小屋だけでは押さえ切れないものになっていただろう。


 通常、弱くなった霊場や、神力の弱くなった場で行われるのが正しい方法。


 しかし今回のように、邪気が満ちる場であれば、それを行うものは自ら生贄となるも同然。


 邪気を活発化させる為の生贄だ。


 マカはぎりっと歯を噛んだ。


 アキを利用し儀式をやらせた人物は、恐らくアキがミナを誘うことを予想してやらせたのだろう。


 ミナの過去を知っていたマカだが、そのことをミナに言ったことはなかった。


 誰にでも触れられたくない事情がある。


 マカはそれを誰よりも分かっているからこそ、口を閉ざしていた。


 なのに…こんなミナの弱味に付け入るようなやり方は、まるでマカに対する挑戦だ。


 そんなことをする人物は、この世でただ一人っ…!


「…マカ?」


「えっ?」


「そろそろ行こうよ。後ろにまだ人がいるから」


「あっ、うん…」


 ミナに手を引かれ、マカはその場から立ち去った。


 二人は葬祭会館を出ると、外の眩しさに眼を細めた。


「良い天気だね!」


「そうだね。こんな快晴なら、二人も迷わずいけるだろうね」


 二人で空を見上げた。


「ねっ、マカ。ちょっと今日はあたしに付き合って」


「良いけど…どこへ?」


「んっ。あたしとアキとユマが行っていた中学。久し振りに行ってみたいと思って」


「でも学校、やってるんじゃない?」


「外から見るだけで良いの。それだけで…満足だから」


 辛さを隠して言うミナを見て、マカは苦笑した。


「…分かった。じゃ、一緒に行こうか」


「うん! 案内している間に聞いて欲しいんだ。あたしとアキ達のこと」


「オッケー。じゃ、今日はとことんミナに付き合うよ」


 二人は手を繋ぎ、歩き出した。


 途中フーカに出会うも、互いに軽く頭を下げるだけ。


 アキのことがなければ、ミナとフーカは出会うことはなかった。


 つまり、繋がりは無い。


 マカは少し痛む心を隠しながら、繋がる手を強く握り締めた。


 決して離さぬように―。



【終わり】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒き手が…【マカシリーズ・4】 hosimure @hosimure

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ