御影様、面倒ごとに駆り出される。

御影様のお仕事 -1-

______「やっと見つかったか。……早くやってください、既に二十分の無駄ができているんですから。」


鞭の音をわざと大きく立て、仕事の完成を急かすケイ。

その音にビクビクしつつ、見つけた書類を手に持ち執務室へと足早に向かうゲンジ。ちなみに書類は全て会議室の棚にあった。会議中だった為とても目立ったが、御影の目つきの悪さと鞭の音に気圧され、誰も「邪魔するな」とは言えなかった。会議の司会役が二人が出て行った後に、「……あの人、今日も徹夜したんだな。」と慣れた口ぶりで言った後、何事もなかったように会議を再開した。


「おかしいなぁ、確かに執務室に持って行ったのに……。」

「この程度の書類の位置くらいちゃんと把握してくださいよ、一応貴方国のトップなんですから。」


この程度、とは言うもののそこそこの量である。小学生の嫌がる夏休みの宿題の三倍はあるだろう。徹夜は全ての非常識が常識になる道具である。


「……あっ、居た!御影様、御影様!!」


赤いカーペットの敷いてある廊下を走ってくる二人の職員。

一人はストレートロングの黒髪によく映える椿の髪飾りをつけている女性、

もう一人は全体的に坂口安吾に似ている丸眼鏡の男性。

二人を一瞥いちべつした後、ケイは声をかけた。


「おや、フウカさんにコウジさん。どうかしましたか?」

「それが……『職務』中の影の一人が、急遽交代を申し出まして、調整が間に合わなくなってしまい…………今現在その人間に影がない状態なんです。」


コウジと呼ばれた職員が苦し紛れにそう言う。

その瞬間、チッ、と舌打ち。空間が一瞬で氷点下に達した。全員の背筋に稲妻が走った。誰がやったかはご想像の通りである。


「……人事課ですか。仕方がない、私が対応します。

そこのダメ王はさっさとその書類片付けてください。手伝うのは面倒なので。」

「今さらっと君『ダメ王』って言ったね……わかったよ、やるよ。」


そう言いダメo……失礼、影王は執務室へと戻った。

それを見届けてから、「さて、」と二人の方を向き言った。先ほどの舌打ちの威圧が残るのか、二人はすごく震えている。


「詳しい説明をして欲しいので、お二方に案内を頼んでも構いませんか?」

「…………」「御意、こちらです。」


フウカはあまりの怖さに舌が回らない(というか気絶した)ようなので、コウジが何とかその代わりに話した。…………やはり足は震えていたが。





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御影様のオカゲサマ!!__影の世界のプロフェッショナルに、なんでもお任せを!!__ 合歓_kouka_ @kouka1119

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