此岸にて

 雨降りの、風邪ひきの、おぼろかの

 闇夜の燔祭はんさい

 ちんくしゃな司祭連が

 ペースメーカーを踏み砕いている


 死

 老人を訪れたもの

 添え木

 医の先達が用意したもの


 深爪の死化粧師が

 ぬか漬けを食べている

 ポリポリと咀嚼の快音を響かせている

 空気がよどんでいる


 (おとうさん、お迎えが来ましたよ)

 (そうかい、それはいつのこと?)


 硬直した顎が

 頑固なまでに閉じようとしない

 花を捧げるように小瓶を運んでいたもろ手が

 厚ぼったくむくんでいる


 胸

 致命の深海

 歌

 最後に残ったもの


 (おとうさん、あなた燃えていますよ)

 (そうかい、それはいつのこと?)


 木馬に乗った過去が

 棺を苛んでいく

 むくつけき葬送を営んでいく

 泣き笑いの生涯が

 弔われる

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