カールとカルロス

やばい、為す術がない。

あたりを見渡すが手がかりになるものはどこにもない。


「まあ、お前が新入りかどうかはどうでもいい。」


くそ、どうすれば…どうすればいい!!

考えても考えても焦りばかりが募っていく。

やばい、息が切れそう。


「ギッタンギッタンに半殺しにしてやーー


カーン!

俺の絶望がその甲高い音でかき消された。


「いったァ…」


気づいた時には目の前の少女が頭を抱えていた。


「ごはっごほ、ハァ」


危なかった…本当に危なかった。

死ぬかと思った…本当に冗談抜きで。


「大丈夫か? 」


そう言われ喘ぎながら見ると、少年が赤錆色の竜(ドラゴン)の拳のような籠手を身につけており、心配そうに言っていた。


「ええ…なんとか」


「クソバカ兄貴何しやがる!! 痛ってだろうがよォ!!! 」


「誰がクソバカ兄貴だ、 クソバカール、最近越してきた有望なる新人をみすみす殺す気か、てめえは」


女性とは思えない腹筋や剛腕をしている妹に対して、見た目貧弱そうな少年は冷静に話していて、なんだかすごいなと尊敬してしまった。


「あ、そうだ新人、名前は? 」


「ええと、カミカジと言います。よろしくお願いします」


俺は良かれと思って頭を下げた。


「おいおい、そういう堅苦しいのは無しで行こうぜ、俺らは一応盗賊だからな」


「え、あ、はい、つい癖で」


「あ、あとリークのやつならその先の反対の部屋に行けば会えるぞ」


「ん? リーク、リータじゃなくて? 」


「リータ? ああ、それは偽名だ本名はリーク。 ついでに俺の名前はカルロスよろしくな」


「あ、よろしく」


「おい! クソバカ兄貴! 何さっきからシカトしてんだ? ああん? 」


「うるせえな、てめえはさっきからごちゃごちゃ、少しは黙れねえのか?」


これは面倒なことになりそうだと俺はその場をすぐさまその部屋を出て、仄かに暗い赤褐色の廊下を通った先の扉を開けると。

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