メイラスの攻防

「はあ…はあ… 」

メイラスは汗を垂らし喘ぎ声をあげながら、ただひたすらに自らに襲いかかってくる腕の攻撃を、レイピアでさばいていた。

悪戦苦闘。

今はその言葉がただふさわしい。

メイラスは何度も詠唱したが、あの肉塊には効果が無く、すぐに再生されてしまう。

メイラスは魔力が尽きかけ、ついにレイピアを出してまで応戦しているというわけだ。

とにかく相性が悪すぎる。

メイラスの魔力量はそこまで多くないし、すぐに尽きてしまうのに対し、相手は無尽蔵にその醜悪な肉を出し続ける。

(まさか、これを全て計算に入れていた? )

あまりにも出来過ぎた話。

何度も何度も繰り返しに分析しなければ出来ない所業だった。

そのうち、

「ゴハッ!」

限界が訪れる。

とうとう肉塊の腕がメイラスの腹に一撃を食らわす。

メイラスは腹を押さえてその場に膝を屈する。

(くっこんなところで!! )

メイラスは甚だ悔しがっていた。

こんなところで死にたくない。

私にはやるべきことがまだ残っているのだと。

しかしながら、理不尽にも肉塊は最後のとどめをするようで、無数のグロテスクな腕を生やし一挙にメイラスに仕掛けた。

メイラスは起き上がれそうもない。

メイラスはあの肉塊に飲まれると思うと、ぞっとした。

「助けて…」

メイラスは弱々しい声でそう言い、

「兄さん…」

来るはずもないの人間を呼ぶ。

ああ、なんと残酷か。

当然、彼は来るはずもなかった。

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