アンデルセン=ヘラクレナ(六)

俺はこの小屋の中で何が起こっているのかわからなかったが、それでも小さい黒ローブが不利になっていることは側から見てわかった。

黒ローブ自身は何かを企んでいるらしいが彼の左腕を見ればそれは出来ないだろうということは想像できる。

俺も何かできないか。

そう思う前向きな気持ちと、足手まといになるだけだという弱音が交錯する。

変わると決めた。

そう決めたのだ。変えると。前の自分に戻りたくないと。

敵を観察していると、ふとあるものを見つけた。

赤い宝石を埋め込まれたブレスレットだ。おそらく黒ローブが所持していたもので、巨兵に殴られた時にきっと落としたのだ。

俺はもしかしたら使えるかもしれないと、吸い込まれるようにそのブレスレットの近くに歩み寄った。

そのブレスレットはたぶん宝石ではないことは、その宝石のようなものからは光沢が出ていないことからわかった。

それを左腕にはめた。はめたはいいが使い方がわからないので色々試してみようと思い何か詠唱しようとしてみる刹那、


好きなものを想像しなさい。

それがあなたの力になる。


という優しくて真っ直ぐな声が、頭の中に聞こえてきた。俺はその声を聞いた時、頭の中が真っ白になったせいかその声の主が誰なのかを考えられなかった。ただその言葉だけを脳に刷り込むように反復させていた。

そして、その通りに従おうと、目をゆっくりと閉じて、想像した時に浮かんだものは、拳銃だった。

「グロック18c インストール」

自然と出た詠唱。

俺の父さんはミリタリー好きで、中学二年生の時にグアムの射撃場に行ったとき、撃たせてもらった初めての銃がグロック18cだったのだ。

野球部だったためにデザードイーグルとかいう化け物拳銃は使えなくても、それなりの銃は使いこなせたのだ。

銃の感動は今でも焼き付けられたように覚えている。その重量、持った時の感触、撃った時の衝撃。

ミリタリーに前々から興味があったのだが、これで俺にミリタリー好きの火がついたのだ。

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