アンデルセン=ヘラクレナ(四)
白骨の巨人の一撃が俺に届くことはなかった。
「すごいよ…」
なぜなら…
「君は本当に凄いよ! 僕が見込んだ通りだったよ!! 」
俺は白い仮面を被った小さい黒ローブに担がれていたからである。
黒ローブは俺を下ろすときに、「アルタを連れて小屋の外に」と言った。
俺はそれに従うことにした。
「キコウ? 何者かねえ? 」
眼前にいる敵は僕を睨む。その敵は水色の短髪に赤いリボンを飾り付け、水玉模様の白いワンピースを着た少女。その少女の左腕は禍々しいことに、肉や血管が剥がれ落ちてしまった骨のようになっている。
そしてその少女を守るように、白骨の巨人の肋骨が囲んでいる。
僕は肩をすくめて言うことには、
「さあね、 それは僕より君の方が知ってるんでじゃない? 」
「白仮面の一味なのかあ? 」
「別に、そうだよとは言わないよ 」
「その名前は僕たちが名乗ったわけじゃない、君たちが勝手に呼んでいる名前を使っているだけだからね」
「つまらない屁理屈をつくのだあ…なぜ我々を狙ったのだあ? 」
「それは自分たちがよくわかってるんじゃない? 常勝の女神さん」
あらゆる戦場、どんな戦況であろうと戦略的勝利を勝ち取る姿から名付けられた、齢十二歳にはあまりにも不釣り合いな異名だった。
「それだけでも危険なのに、グリモア史上初の男爵の地位から大公への階級昇進。そんなことされちゃ外様諸侯たちの士気が上がっちゃうでしょ」
大公の地位は今のところ王直属の貴族であり自らの名字に武器の名前を冠している十士族のみ。
ヘラクレナという名で大公になることは異例なのだ。
「君が悪いんだよ? 自分で敵を増やさずにひっそりと田舎の領主をしてればよかったんだ」
目の前の少女はそれを聞いて切歯扼腕してはこう言った。
「我は…我は自らの生き方に後悔をしたことなどないのだあ、ただ… 」
少女はただ…と言った途端に口をつぐみ僕から目を逸らした。
「何でもないのだあ、キコウにとってはただの野暮用であり、我にとっては…ただの幻想でしか…ないのだあ 」
眼前の少女は何か、思い物があるかのように、最後は途切れ途切れだった。
僕は黒い宝石の入ったダガーを、右手に逆手持ちで構えながら、
「悪いけど君に同情するつもりはない、僕にだって君と同じものは持っている」
僕が言うと、目の前の少女は自嘲気味にクスクスと笑ってから高笑いしたかとおもえば、
「たわけが! 敵の同情されようなど微塵も思ってないのだあ!! 」
と少女はまるで自らの弱音を吹き飛ばすかのように叫ぶと、白骨の巨人がその少女の声に応えるように右腕を振り下ろした。
僕はそれを飛び上がって交わした。
飛び上がった暫時、少女と目と目が合うと少女はうそぶく。
「それに負けるつもりなど毛頭ないのだあ! 見せてやるのだあ!! 常勝の女神の実力という奴をなあ!!! 」
その途端に白骨の巨人の左腕が僕を襲った。
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