アンデルセン=ヘラクレナ(三)

それで本当にいいのか? 上鍛治 銀!お前は変わるんじゃなかったのか?

それが頭をよぎる。

どうして異世界に行きたかった?

ーー女の子と異世界ライフを楽しむため。

なら、どうすればいい?

ーー自分を変えなきゃいけない。

目の前に少女はまだきっと死んでいない。

気絶しているだけだとしたら、俺はまだ終わっていない。

「やめろ…」

弱々しい声で言う。

そのせいか、興奮しきっているアンデルセンには聞こえていない。

「ハッハハ! 殺してやるのだあ! 我に殺される事を光栄に思うがいいのだあああ! 」

白骨の巨人が右手を構えた瞬間、俺は

「やめろって言ってんだろうがあああああああアアアアアアア!!!! ゴホッゴホッ 」

と、腹から出る精一杯の声を出した。

そのせいか最後は息が続かず、高音になってしまいおまけに咳を吐いてしまった。

「ああ? 」

アンデルセンの狂気に塗り固まったような顔が俺を睨んだ。

「やるんだったら、俺をやれ 」

それに怯まず、俺も逆に睨み返ししてやった。

「なんなのだあ? さっきまで我の攻撃を避ける事も出来なかったくせに、偉そうに 」

「ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うるっせんだよ! 三流貴族がよぉ!!! 殴るんだったら、殴ってこいって言ってんだよぉお !! 」

アドレナリンが出ているせいか自分でもよくわからない挑発してしまった。

アンデルセンにどうやら、この挑発は効いているらしい。

「言っておくが…キコウ、私がどっちを先に打とうと変わらないのだぞぉ? 順番が変わるだけだあ、死ぬのに変わりはないのだぞ? 」

少しイラついた顔しているアンデルセンが俺に忠告してくる。

ああ、わかってるよ、そんなの知ってる、けど…

「今、俺がここで彼女をもし助けなかったら、俺はきっと一生このままだ、そしたら俺は一生変われなくなる。ここに来た意味を見出せなくなる 」

俺は拳を握って、精一杯に叫んだ。

「もう嫌なんだよッ!!あの頃に戻るのは、もう嫌なんだよ…… だからッ!!このままあの頃と同じ人生を歩むくらいなら、俺はきっと死んだ方がマシなんだッ!!!」

俺の心の中を全てさらけ出したような言葉の羅列。

アンデルセンには届いていないかもしれないと思ったが、アンデルセンは俺を鼻で笑わなかった。

「そうなのかあ… キコウにもその程度の決意はあったのだなあ、キコウにチキンと言ったが、それは撤回しよう。

気の毒なのだあ、キコウを我が兵士として育てられなかったことが。

故に、死を持って称えよう」

そうして、白骨の巨人が右腕を構え、俺を貫こうとしていた。

俺の身長と同じくらい拳だった。

これが俺を貫いたら、きっと俺は死ぬだろうけど、俺は、後悔していない。

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