アンデルセン=ヘラクレナ(二)

地響きとともに、地面を割るように出た後、石で出来た天井を突き破ったのは、 日本の妖怪である『がしゃどくろ』を想起させる白骨の巨人だった。

頭はドクロ。

上半身だけを見せているものの、それでも石で出来た小屋(突き破った先に空が見えたから)の二倍あった。

白骨の巨人の両腕はこの小屋に収まらないほど大きい。

禍々しい姿をした白骨の巨人は、俺たちを虫けらのように覗き見ている。

顔から汗が溢れ、手は震え、足はすくんでしまっている。

「逃げてください! 」

アルタはこちらを向きながら叫んでくれていた。

「足が…」

動かない。

足が固まって動けず、まるで何か掴まれているようだ。

動け! 動け!と指令しても脳がそれを拒否しているらしい。

アルタが何かを言って、こちらに走ってくると俺を突き飛ばした。

俺はなぜ突き飛ばされたのかが全くわからなくて動揺していた。

その瞬間、左から来た白骨の腕が彼女を右へと薙ぎ払った。

骨の砕けた音がする。

アルタは右の壁に激突し、頭から血を流して気絶していた。

アンデルセンは言う。

「献身の心という奴なのだあ? くだらないのだあ。そんな事をしていても、キコウの心体が擦り減っていくだけなのだあ。何の意味も持たないのだあ」

俺は何をしているんだろう…。

目の前には白骨の巨人とその巨人の肋骨の中で守られている、俺を嘲笑する少女が見えた。

なんかもう…どうでもいいや。

一人の女の子すら守ることの出来ない奴が、異世界ライフを送るだなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。

次の相手はきっと俺だ、

「ほら、見てみるのだあ、助けられた本人は茫然自失ッ!! こんなへっぽこに命を捧げても意味など無いというのに、愚かで滑稽なのだあ!! 」

アンデル嬢は俺に一瞥をくれてから、アルタを見た。

「あのチキンは後でいいのだあ、まずはアリ公からその息の根を止めてやるのだあ 」

そうか… 俺なんてにも相手されないだ。

所詮、俺は廃人なんだ。

きっとこれが普通なんだ。

もし目の前にテロリストがいて、女の子が人質に取られていたら、助けていくって? 絶対に無理だ。

勝ってこない、勝てるわけがない。

アルタがあんな風にできたのは彼女がすごく命知らずなだけで、俺が当たり前なんだ、標準なんだ! 平均なんだ!

だから、俺はヘタレなんかじゃないだ、普通なんだ!!

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