ヘラクレナ夫妻と黒ローブ(一)

ガッシャーン!!!!

窓の硝子を破られ、爆炎が起きるのと破片が飛び散るのと同時に出てきたのは、ヘラクレナ夫妻だった。

ヘラクレナ夫妻は軽度の火傷を負っていた。

「おいおい? 反撃なしの決闘なんて面白くもなんともねえぞォ」

自分の身長よりも大きい大剣を難なく振り回し、その大剣を自分の肩にしょった、白い仮面を被った黒ローブは、煽るように彼らに言う。

ローブの中は割れた腹筋を見せつけ、声色は低いが、女らしいさがあり、多分女だろう。

大剣は両刃であり、溶解炉で溶かしたような赤熱の刃が付いており、スチームパンクを思わせる機械的な見た目をしている。

「やっぱりアタシ一人で正解だったなァ、あのチビに任せる必要なんてこれぽっちもねェ」

ローブの女は硝子を踏み砕きながら歩いてくる。

「私を舐めるべきでないのだよ、賊が! 」

アイソーポスは地面から起き上がって黒ローブに向かって言う。

「私も昔は、 名のある貴族だったのだ、腕にはそれなりにあるのだよ 」

アイソーポスは黒の腕輪を黒ローブの女に見せるように構えた。

「アストリッド、援護を頼むのだ 」

「あらら〜? 久しぶりの共同作業ですね〜貴方」

「そうだな、初めて会った時以来かな」

その瞬間、アイソーポスの頭上からジューと焼けるような音がして、アイソーポスは振り下ろされる赤熱の刃を紙一重で避けた。

「礼節がなってないのだよ、賊が」

「生憎、オメェが言うようにアタシは賊だからなァ、礼節なんてわからないんだよォ 」

黒ローブの女はまた、赤熱の長刃を振り下ろそうとする。

アイソーポスの黒い髪がキラリと輝き、黒い腕輪が神々しく光った。

「闇ノ守護者ルキアヨ、異次元ノ門ヲ開キ給へ 」

すると、地面に出来た黒い穴が出現し、黒ローブの女を飲み込んだ途端、アストリッドが続いて次の詠唱に入ると、 浅葱色の瞳と薄い色をしたブルーサファイアの指輪が光り輝き、

「水ノ守護者エノイオスヨ、今一度我ニ氷ノ槍ヲ与エ給へ 」

氷の結晶が作りだされそれはどんどん肥大化し最終的に三又の氷槍へ変貌した。

深淵の穴は空に出現し、空から投げ出される黒ローブの女。

それを三又の氷槍が貫こうとする。

これを黒ローブは、その豪腕な膂力で持って、氷の槍を薙ぎ払う。

「効かねえぞ!! オラ!! 」

黒ローブの女は豪快に叫ぶ。

そのまま上段の構えをしてアイソーポスをぶった斬ろうとしているらしい。

「闇ノ守護者ルキアヨ、異次元ノ門を開キ給へ」

そして、黒ローブの女は「またかよ! 」と言って深淵の穴に飲み込まれる。

「アストリッド!! 」

「は〜いは〜い、水ノ守護者エノイオスヨ、今一度、我ニ数多ノ氷槍ヲ与エ給ヘ! 」

そして、数えて十あまり氷の結晶の結晶が肥大化。

全て三又の氷槍と化して、黒い穴から出てきた白仮面目掛けて発車される。

「くそ! 面倒くせェなぁ!!! 」

それをひと薙で一掃し、黒ローブは舌打ちをした。

「これじゃあ、埒が開かねェ 」

そして、黒ローブはニヤリと笑い、

「あれを使うかァ」

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