アンデルセン=ヘラクレナ(一)
「やめてください! 」
…はずだった。アンデル嬢は俺の耳が切れる寸前に手を止めた。
声が聞こえた。 わからないが、聞いたことがある声だと思った。
「誰なのだあ? キコウは? 」
アンデル嬢は手に持っていた凶器を下ろし、その声の主に向かって睨みながら言った。
「名前は言えません! 」
彼女は愚直に言った。
そう言われたアンデル嬢はあまりにも愚直すぎる回答にクスリと笑い、
「まあ、よい、アリが入ってきただけなのだあ。やろうと思えばすぐにでも殺せるが、せっかく我も気分がいいのだあ、虫けら風情でも遊び相手にはなるのだあ」
そう言うと、アンデル嬢は持っているノコギリを適当に投げ飛ばして、詠唱する。
「『彼らの生きた証は…」
「やらせるわけないでしょう! 」
そう言って、アルタはナイフを持って飛びかかる。
「貴公は、礼節というものを知らんのか?!」
アンデル嬢は紙一重で一撃を避けるが、二撃に続く蹴りは避けることが出来なかった。
アンデル嬢は頭をぶつけ、後頭部を押さえながら悶えていた。
「大丈夫ですか?! 良かった、鎖じゃない…今、ほどきますからね! 」
アルタはそう言って俺の縄をナイフで引きちぎってくれた。
俺は訝しく思った。
彼女はなぜ俺を助けてくれたんだろと、こんなタイミングよく助かるものなのか。
それにこの子はなんで鉄格子の場所に来てるんだろう? もし盗賊が今襲ってたととしても、普通なら宝物庫からなのでは、なぜこんなに場所に?
「あのう…」
俺は彼女の黒の隻眼を見ながら、言う。
「はい、なんですか? 」
相手も怪訝そうだ。
「なんで、君は? ーー
「『ちり一つない焼け野原の真ん中にとてつもなく大きい巨人の骨があった』」
俺が言おうとした言葉をアンデル嬢の詠唱が遮った。その詠唱をした後、なんの前触れもなく地面が揺れ始めた、どうやら何かが出てくるらしい。
アルタがナイフを構えて、
「下がってください」
と言われて俺は、女に守られてる自分が情けなく感じた。
「許さんのだ…我の楽しいひと時を無下にしたなあああ!! ただ死ねると思うなあ? 絶対の力という名の絶望を味わいながら死んでいくがいいのだああ、アハッアハハハハハハハ!!!」
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