12ページ 作戦変更
黒いローブを被った少女は路地裏に入っていき、俺はそれを見失わないように追いかけた。
入り組んだ路地裏の中、
「どうだった? アルタ」
あれは…確か、あの時にリータって呼ばれていた男の子だ。
あの、なんか偉そうなやつと白髪の少女が話していた。
「すみません、見つけ…られませんでした」
どうやらだれかを探しているらしい。多分、あの銀髪のお姉さんのことだろう。
「全く…どこ行ったんだろう」
俺がここにきた理由としては、まあ、そこまで意味はない。ただ気になった。それだけだ。
すると、少年はため息ついては、
「あ〜あ、ローゼは居なくなるわー、 勧誘出来たはずの少年を逃すわー、 全く…ついてないなー、僕」
「リータさん、あの…偽名を…」
「え、ほんと?! 今僕、本…偽名じゃなかった?! 」
どうやら偽名を間違えて本名を言ったらしい。
いやいや、間抜けすぎるでしょ。
「はあ…これは本格的に運勢は期待出来ないみたいだね」
何かこういうことをしているとなんだかスパイをしてるみたいでワクワクする。
「そ…そうですね」
「ねえ、アルタ」
リータはそう言って壁を背を任せて座る。
「はい…なんでしょう? 」
彼女は膝を曲げて体に土をつけないように座った。
「君の故郷ってここだったよね? 」
「ええ…そうですね」
そう答えた白髪の少女はどこか寂しそうだった。
「どうだい? 久しぶりの帰省は? 」
「どうって…」
どうやら彼女にとってここは、あまりいい思い出の場所ではないらしいということは、彼女が少し間を空けたことから理解出来る。そこに、何か重いものがあることがわかった。
それを見越してリータは、
「僕もここが故郷らしいよ 」
リータは天上を見上げながらそんな風なことを言った。
「へえ…うん? その…らしいってどういうことですか? 」
「うん? ああ、それ? 実感が無くてさーー
なんだか辛気臭い話なってきたなと思う。
さすがに平安時代の貴族じゃあるまいし、垣間見なんかしたって俺に何か利益があるわけじゃないというか、ほとんどこれストーカー行為に近い。
故に俺はその場から立ち去ろうとした。
「さてと、さっさとローマを探して、明日の作戦についてのことを話さないと」
え? 作戦? どういうことだ? 彼らが何かを企んでいるということはどこかのお宝を盗もうとしているということだろう。
「明日決行するのに…今日話してしまうんですか? 」
「こういう伝達は早いことに越したことはないからね」
「まあ…確かに…そうですが」
「なに? どうしたの?何か不満でも? 」
「いえ…なんでもありません」
「それに明日の獲物は大きいからね」
「そう…ですね 」
「なにせ、この国の三代勢力の一角の一人であるアンデルセン・ヘラクレナを潰そうとしているんだからね」
ん? 今なんて言ったのだろうか? リータくんは、アンデルセン・ヘラクレナって言ったよな…アンデル嬢ってそんなにすごい人だったの?
まず突っ込んだのがそこだった。すみません、ツッコミ所違いますよねー。
早く、このことを伝えないと…そう思って後ろに下がろうとした瞬間、
ポキ
なにかの枝が折れた音がした。
「誰だ?! 」
リータの声だろうか、こちらに呼びかけてきたようだ。
咄嗟に俺は、「やべっ」と呟いてしまった。
ばっかやろおおおおおおおおおおおおおおお。
条件反射で後ろを向いて俺は逃げようとする。出口まではそこまで遠くない。すぐ走っていけば追いつかれることはないはずだ。
というか捕まったらなにされるかたまったもんじゃない。本能的やばいと悟る。
出口がどこにあるかもわからないのに必死に後ろを振り返らずに走ろうとする。
「待て! 」
そんな声が聞こえたが関係ない。捕まったらゲームオーバーなのだ、待つわけ無かろうが!
しばらく走っていると出口が見えてきた。すると同時に自分のもう、すぐ後ろにいることが声の大きさでわかった。
そして、一歩一歩踏み出し、出口まであともうちょっとあと少しーー
「ああ、くそまたあの少年に逃げられちゃったか 」
あと一歩、二歩で届きそうだったのだが、間に合わなかったらしい。
「しかも、よりによってアンデル嬢の執事をやることになってたなんて、これもなにかの縁なのかね」
とリータは呆れてように言いながらもなんだか嬉しそうだ。
「どう…されますか? 」
とアルタが言うとリータは少し考えた後に何かを閃いた様子で
「アルタ、一刻も早くローマを見つけ出すよ」
リータは笑っていた。まるで子供がいたずらをするようなそんな感じ、しかもリータが子供のように見えるためそんな風に余計に見えてしまう。
「結局…どう…するんですか?」
アルタは伺うように上目遣いで言うと、リータは愉快に一言だけ言った。
「作戦変更」と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます