最終話 琴座κ流星群
追いかけっこ終了から、もう約3ヶ月が経過した。
今日は『琴座κ流星群』が極大を迎える日……。
「おーい、遅いぞ、三日月!」
「ごっめんごっめんっ!つい電車で寝過ごしちゃってさ」
「ここまでの道中でいつ電車に乗る必要があるんだよ」
おうちから徒歩です。
ぶー、とほおをふくらませる三日月。
「でもさあ、寝過ごしそうになったのは一緒だよ?」
「遅れたという事実も変わらないしな」
「うぎーっ、月草がイジワル!!犬キャラのくせにいっ!」
まだ犬キャラが続いてたことに驚き……きっと一生引っ張られる話題だろう。
世の中、諦めこそが肝心だ。
ここはいつもの旧天文台。
全壊しているのにそのまんま、な隕石が落ちてきた場所である。
久しぶりに集まって、最後の反省会、といったところか。
「お久しぶりです、三日月さん。あの、月草さん、お言葉ですが、三日月さんはむしろ0.1秒も狂わず時間ぴったりにやってきたのですから、遅れていないですよ?」
「一番遅かった、イコール遅れた、だよ。覚えておいたほうがいいよ?」
マジか、と屑が反応する。
なんで真に受けちゃってるんだアイツは。
「さて、ヒロインも来たところですし、司会兼進行は月草さんでいいんですよね?」
「いやいや、ここは日陰ちゃん以外の人がやるべきではないと思うよ。
てか、むしろ日陰ちゃん以外はやる価値がないね」
それはさすがに言いすぎだけど。
「……では、まず始めに」
日陰ちゃんが進め始めるのはいいが、俺が流された。
ちょっと今の存在が空気みたいで嫌なんだけどさ。
どうして日陰ちゃんは人の扱いに小慣れた感じになってるんだ。
「銀河の創立も私の宣言からでしたんで、終わる時も私が言いますね。
本日この時、この場所をもって、『銀河』を解散とします。反論意見は、ありますか?」
「えー、寂しくなっちゃうなあー」
反論、というか意見をしたのは枯草さん。
しかも感情的な一身上の意見だった。
まあこの人らしい、っちゃらしい気もするけれど。
「……光源もいませんし、するべき事もないですしね、仕方ないです」
「でもさー、せっかく知り合えて仲良くなれたのに、もう会う機会とか激減しちゃう
わけだよねー、そこら辺が、残念かな」
「……そうですね」
悲しそうに暗い表情をする日陰ちゃん。
でも無理にでも笑顔を作って。
「でも、またお会いしましょうね!みなさん、今まで私の勝手な行動に参加してくれて」
有難う、有難う有難う有難う。
本当にどうも有難う、と日陰ちゃんは何度でもくり返す。
「有難うございました。何度言っても、何回言っても言い足りなくて。
わたしはとても、楽しかったです嬉しかったです」
年齢も割りとバラけている『銀河』がどう知り合ったか、俺は知らない。
知らないけれど、きっと今までに色々な事があったんだろうな、ということくらいは分かる。
だからこそ、“楽しかった”し“嬉しかった”。
「みなさんは……これから、どうなさるんですか?」
そう、“物語”がここで終わっても“これから”が俺たちにはある。
まだまだ続いていく……終わりなんて無いかのように。
「俺は、ヒューストンに留学することになったよ」
「ER3!?」
屑の発言に思わず変なつっこみがでた。
そんなわけないだろ、としれっと言う屑。
「隕石を、宇宙に還したくてさ……本格的に、学ぼうと思って」
「目指せ、宇宙飛行士っ!みたいな?」
「いや、別に宇宙飛行士は目指してないですけど……」
枯草さんは、ふうん?と首をかしげる。
「じゃあどうやって、宇宙に還すの?」
「無人ロケット……とか、で」
まあ隕石って、そんなに重要じゃないのにいくつもあるから、有人だと金がかかって仕方ないだろうしな。
「へー、そっか。じゃあ私も投資しちゃおうかな」
投資する気が早すぎる。てかその場のノリかよ。
さすが秀才の屑である……普通は学校の授業についていけなくなると思うんだけどな。
“修行パート”の失踪期間の勉強すら、軽々こなしてしまって、さらに上を行くとは。
ものすごい頑張りやさんか、秀才の二択選択だけど、きっと両者とも正解。
屑って真面目な奴だからさ。
「月草くんと三日月ちゃんはー?」
「普通に進学しますよ、普通に」
誰かさんと違って、失踪とかしていなくても、留学する余裕なんて無い。
「枯草さんはどうなんですか?」
三日月が何気なしに質問すると、枯草さんは意外にもしぶった。
「え……言わなきゃダメなの?」
ここは素直に言っちゃいましょうよ。
「うう……お姉ちゃんに言われて、大学に行くことになったよ」
「「「大学!?」」」
この人、もう高校生活を終えてしまわれたのか。
つーか『銀河』の活動時に高校3年生だったのか。
この人も天才の部類の人か、はたまたおバカな大学か。
そもそもこの人、ちゃんと単位とれているのか?
そこらへんはお嬢様設定をフル活用。
「どこの大学ですか?」
デリカシーの欠片も無い三日月が、好奇心のみを盾にして聞く。
「え?……
県内トップの私立大学、さすがだ。
「凩さんは?」
今までずっと会話に参加してこなかったことを考慮してか、屑は凩さんに話をふった。
出番は最後くらいは平等にしたいもんね、もうすでに無理なフラグたってるけどさ。
「私はですね、前に働いていた養護施設に復帰させてもらえることになりました。
よかったらみんな、来てね!」
この人に養護施設で働いていた、なんて経歴があるのか。
……この人にそんなことをやらせて、大丈夫だったのだろうか。
「日陰ちゃんは?」
会うたびに制服を着ているけれど、学校に通っていなさそうな日陰ちゃん。
それとこれとは別問題、かな。
「わたしは高校生になりますよ」
「高校かー」
この不登校っぽい子でも行ける高校があるのか。
それはそれで学校に不安を抱く。
不登校の子を入れる学校、ってさ。
「どこの高校?」
「
「ウチの学校かよ!?」
まさかのダブり。
え果永高校だったんですか、と日陰ちゃんが驚く。
いや、驚きたいのはこっちだよ?
「月草さんって頭がよかったんですね」
それってなんかナチュラルにひどいな。
「そっか4人とも同高かー、いーなー……あ、屑くんいないんだっけ?」
思い出したように言う枯草さんも、なかなかナチュラルにひどい。
「青春だねえ……」
大人ぶって先輩風を吹かせようとして失敗している三日月は、無視。
枯草さんの方が先輩だし!リアルに!
「じゃあまた、学校で会えるかもしれないね」
「俺は会えねえじゃん!」
屑の声が悲痛ってか、悲壮ってか。
「留学、取り消してもらえば?」
「できるかそんなこと!」
だろうね、留学なんてたいそうなものが、そう簡単に取り消されるとは思えない。
「屑、……頑張れよ」
「うっぜーっ!」
うざがられてしまった、しまった失敗。
同じことが二度とくり返されないであろう、貴重でかつ、貴重な1年を過ごした俺たち。
貴重で、本当に色々あって……みんなみんなみんな、大切な想い出だ。
大切な大切なモノたちだ。
廻り巡ってできるなら、またあのメンツで話がしたい。
そして、あの星々も。
きっといつしか、居るべきところへ、還るべき場所へと戻ることができるであろう。
そんな“未来”に続くように、俺たちはまた今日もくり返していくんだ。
“未来”につづくために“終わり”なんて、無いのだから。
星々の欠片 なみと @namito3
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