告白の変事
返事を聞く前に、頭の中ではもう付き合っていて、結婚して子どもがいて喧嘩しては仲直りして、お互い白髪頭になったねと笑って孫を甘やかして、病気になった僕は先に死んでしまった。
「ごめんなさい」
振られる瞬間もかわいいと思った。
一度は病死した僕の一生が逆回転で高校生の地点まで戻されると孫の顔が思い出せなくなった。
「おならしていいですか?」
振られたけど、せめてものお願いをした。おならを聴いてほしいと思った。恋人になることは叶わなかったけど、おならを聴いてもらうことでそれなりの関係になりたいと思った。できれば、彼女のおならも聴きたいけどそんなお願いできるわけがない。嫌われたくはない。
「さようなら」
逃げ去る彼女の耳まで、放った快音は届いただろうか。
流石に、家に着く頃には過ちに気がついた。どうかしていたのだ。振られたショックで気が動転したところに、屁の気配が来たのがまずかった。すがっておならをするような男には、幸せな未来はおろか明日すらない。倒れ込んだベッドで、自室の天井が昨日までのそれとは違って見えた。目を閉じて、もう一度僕は死んでみた。そして二度とおならをしないと白髪頭の彼女に誓った。
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