第5話 魔女っ娘めぐたん

「あー、だりー、さっきからドンキの歌が脳内再生とまんねー」


少年はレジ横のガラスケースの肉まんの廃棄作業をしながら歌っている。


ってかたまに肉まん食ってるし!?


「パンパンパーン、パーンツー、パンツ包茎~

いっつでもどこでもモリマンジャングル~

じゃんぐるだぁ!」


両手を上にあげてオラウータンみたいなポーズをしているところで扉がひらいて、中学生ぐらいの見習い魔女娘が入ってきた。


「ひっ!」


「(なになに?ここ。学校の見たことない扉開いたら変なとこ来ちゃった、転移魔法?どうみても外国よね?

あ、なんか変な人が両手上げてる、この国のあいさつかしら?)」


魔女娘もひきっつた笑顔で両手を遠慮がちにあげて顔を赤くしている。


あ、なんか虎とちがって「にゃん!」ってカンジでかわいい。


「おう!?中坊?がこんな時間になにしに来たんだ?迷子か?」


盛大に魔女娘がきょどっているとおなかが鳴る音が聞こえた。


「ぐぅうぅぅぅ」


「なんだおめー腹減ってんのか!?食いモンはあっちだ」


レジを通り過ぎて向こう側にある、お惣菜やパンがある棚を指さす虎。

魔女娘は警戒して虎に背を向けないようにしながらレジ横を通り過ぎる。


「あ、あははーありがとうございますぅ」


見たこともないものが見たことのない品目の多さで売っている、正直買い物に来たわけではないので、購入予定の物も思い浮かばないし、お金も持ってきてない。


「(あ、すごーい!みたこともないおいしそうなパンがこんなにいっぱい売ってるなんて!おなかすいたー)」


魔女娘はパンを手にとろうとしてパンが透明な薄い膜に包まれている事に気がつく。


「えっ!この薄い膜ってまさか魔法障壁!?」


「(あの原住民みたいな、到底高度な魔法が使えそうにない顔の店員が、全部のパンに魔法障壁を張っているというの?いったいなんのために?

防御魔法専門の先生だって学食のパンに1つ1つ防御結界を張るなんてできるかしら?

まって、それにこの涼しさ、コールド系の魔法陣がどこかにあるはず!?

こんなの高位のエルフじゃなきゃまかなえる魔法力じゃない、人間には不可能よ、店の奥に何人も魔法使いがいる?いや、そんな魔法力は感じられないわ。

どこかに魔力供給源があるはず)」


「あ!きっとあれね!」


魔女娘はフローズンスムージーメロン味と、ソーダ味の機械をみつめる。


「(最新の研究では魔法力を保持できる液体ができたって聞いたことがあるわ!

まさか実用化されていたなんて!ぐるぐる回っているのはきっと魔力濃度を一定に保つようにするためね。)」


「(でも膨大な魔力があったとしても、こんなに精密にコントロール出来ているのはなぜ?)」


魔女娘はふと手に持ったチョココロネの裏のバーコードとQRコードをみて驚愕する!


「(こ、これだわっ!だいぶ斬新なデザインをしているけどこれがきっと魔法陣なのよ、であれば、水晶玉かそれに準じるもので制御可能なはず、まさか!)」



「(あの店員、端っこが青とオレンジ色の四角い板状のものを熱心に見てすごい速さで指を動かしているわ、きっとあれが術式を制御しているアイテムね?)」



「あ!死んだ!ローラーふざけんなよ!まちぶせうぜー!」


勤務中ゲームすんなし!


「(なんてことなの、王都の魔法アカデミーに史上最年少で、飛び級で合格したからって、私ちょっと調子に乗っていたわ、これはさらなる研鑽が必要ね!)」


あ、あの、このパンの魔法陣の解除方法についてお聞きしたいのですが…


「(は!?何言ってんだコイツ?

あーわかった、中二病ってやつだな?ここはノってやんのが大人ってもんか…)」


「かしてみ、俺の異能を打ち消す右手でよぉー」


虎はこぶしを振り上げる


「えっ、まって、魔法結界を物理攻撃で割るなんて!きゃっ!」


バンっ!!


魔女娘はとっさに爆発を避けようと後ろに下がったためケーキ類の陳列棚にぶつかり尻もちをついた。透明なケースに入ったケーキがいくつも魔女娘の頭の上に降り注ぐ。


「わーーー!」


「あ!なにやってんだテメ!」


「おうおう!どーしてくれんだよ、こちとら昨日店長にクマにされてんだよ!

これ以上クマられたら、ヒグマになっちまうだろうが!とりあえずこの箱ん中に落とし前入れてけや!」


「ひいぃ、ごめんなさい(何言ってるか意味わかんないけど)ごめんなさい」

「でもでも、わたし突然来ちゃたからお金持ってなくて、その、1回出ちゃったらまた戻って来れるかわからないし…」


「なにー!!カネ持ってねーだと!!」


「しょーがねーなコノ…(いやダメだ、カネがなくてもゴネりゃなんとかなると味をしめちまったらコイツにとってよくねー、オトナの世界の恐ろしさを思い知らせてやらねーと)」


あんたもまだ子供でしょーがっ!


「下着で勘弁してやる!」


「!?」


 はっ!?なに言っちゃってんの?


「ブルセラショップで高く売れんの知ってっからな」


あんたいつの時代の人間よ!


「まずはブラをはずせ!」


おまわりさんーん!コイツですぅー!


「は、はいわかりました…」


えっ!なんで!?魔女娘ちゃんダメー!


魔女娘は最近するようになった、ちょっとオトナな(本人の中ではオトナっぽいが、いわゆる一般的な)ブラのホックをはずそうと、背中に手をまわしてもぞもぞとやっている。まだなれていないためかなかなか取れない。

顔を真っ赤にして泣きそうな目をしている。


「(恥ずかしくて逃げだしたいけど魔法力の差は歴然、私じゃ逃げきれない…)」


魔女娘は震える手で黒いブラジャーをさしだす。


虎は真顔でクマのように頭に二つできたたんこぶのところにブラのカップがくるようにかぶって顎でとめた。


「(やだ、この人変態!?羞恥と屈辱で頭がおかしくなりそう…)」


虎は腕組みして仁王立ちで言い放つ


「よし!次はパンツを脱げ!!」


「は!?は、はい…」


少女はローブをたくし上げて黒のパンティーを脱ぎ、これも差し出す。


「はぁ、はぁ(もうダメ、なんか体が熱い、心臓が壊れそう、

でもなに?この興奮と恍惚感は、くせになりそう…私完全におかしくなってる)」


ま、まさかこの子…


虎は表情一つ変えずにパンティーを被るとビシッ!っとポーズをとった。


「変、態、熊、仮面!!」


「あぁん、ん、はぁはぁ…」


魔女娘はくるしそうに胸を押さえ、うるんだ瞳で虎をみつめて息を切らしている。


「あ、あの、ご主人様マスターとお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「よし!呼べ!」


「は、はいぃ、ありがたきしあわせ…」


少女の震える身体は溶けるようにくずれ落ちて、床にへたりこんでしまった。


魔女っ子のMはドMのM!!


こうして無垢な少女は何段飛ばしかで大人の階段をあがったのだった。



第5話 終





ちょっと作者、そこに座りなさい。


はい、変〇仮面サイコーです!


そんなこと聞いてんじゃないわよ、あんたそろそろ死んだほうがいいんじゃない!?というか死ね!


はい、ありがとうございます!もっと罵ってください。


おまえもドMだったんかーっ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界コンビニ(ヤンキーと愉快な仲間たち) 森野熊燦 @harukuma4

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ