第28話 永遠のような一瞬
フェルシは、ルトロスと一緒に生きていけさえすれば良かったのだ。それ以外には何も望まなかった。だから、ルトロスの言葉が受け入れられなかったのだ。彼のたった一つの望みすら、神は踏みにじって捨て去ったのだから。
魔王の玉座に座って、昔と変わらぬ優しい笑顔を浮かべるルトロスは、その笑顔のままでフェルシに恐ろしい事実を告げた。
「フェルシ。君が探していた魔王は、俺だよ」
そしてフェルシの手から転がり落ちた剣を魔法で引き寄せ、フェルシの手に握らせる。その時間が、フェルシには永遠のように長く感じた。
「世界を救うためには、勇者が魔王を殺すしかない」
ルトロスの表情は、それでも優しい笑顔のままだった。
「俺を、殺してくれ。フェルシ」
フェルシはその言葉が、世界の破滅の始まりの音に聞こえていた。
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