第2話 猫
「おやすみ」
鈴の音のような、綺麗な声。
気がつくと、隣で少女が微笑んでいる。
少女の隣には、花冠をつけた黒猫が眠っている。
ーーここは、何処だろう。
僕は、いつの間にここにきたのだろうか。
何も、思い出せない。
「何もしなくていいの。あなたは十分、頑張ってきたのだから」
と、少女は言った。
黒猫はすやすやと眠っている。起きる様子は、まるでない。
「何も考えなくていいの。あなたは十分、みんなに尽くしてくれた」
と、少女は言った。
黒猫は眠っている。
「何も言わなくていいの。あなたは十分、みんなから認められてる」
と、少女は言った。
黒猫は動かない。
「ーー、ーーー、ーーー」
と、少女は言った。
内容は分からなかったが、十分だった。
「ーー、ーーー、ーーー」
と、不意に気づく。
あ、この黒猫は、僕自身だったのだと。
最後に、愛する主人の言葉がわかって良かったと、
幸せな終わりだったなと、
僕は思った。
ほっこり短編集 虹色 @nococox
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