第4話 白と黒

「はい。これは二本とも同じ場所で見つかった人間の骨です。大腿骨ですね。どう思われますか? 研究所でも分からない、魔法が使われたかのような事件です」


「一部分だけ黒かったのですか? 病気とか、治療痕とかでは?」


「全身の骨が見つかっています。一体は普通の白骨遺体。もう一つは全身が黒い骨の遺体です。頭蓋骨だけではなく、歯まで黒いのです」


質問に質問で応えた北原に、嫌な顔一つせず、東雲は淡々と答える。


「同じ場所だから、同じ条件。でも、白い骨と黒い骨?」


頭をフル回転させる北原だったが、全く分からない。しかし、東雲の表情は深刻だった。この黒い骨が不可解であるだけでなく、彼女は何か別のことを考えているように思えた。


「あの、黒い骨と白い骨があったとして、被害者は特定できないんですか?」


「それが、両方とも分からなかったんです。二つとも、今のところ身元不明です」


被害者の身元が分からなければ、加害者を特定できないのだろうか。刑事ドラマしか見たことのない北原には、さっぱり分からない。確かに、遺体を運んだ人物が見つかっても、加害者を特定できなければ、殺人罪ではなく、死体遺棄の罪にしか問えない。やはりこの二人を殺した殺人鬼を見つけるには、身元を特定しなければならないのだろう。


「黒い骨の謎が解ければ、事件は解決できるんですか?」


「何を、おっしゃりたいのですか?」


「いえ。東雲さんの表情が、あまりにも深刻そうなので。この事件で、もっと大きな

問題が起こるのかな、って思っただけです」


東雲はわずかに鼻で笑った。そして、ソファーに彼女はもたれかかり、天上を仰いだ。長く溜息を吐き出して、また北原と向き合う。そして、ちらりと時計を見やって写真を音もなく回収した。


「勘は鋭いのですね。魔法探偵の弟子だけあります。しかし、今日はもう時間です」


「アルバイトです」


東雲が苛立って、自分を小馬鹿にしたことを悟った北原は、即答していた。東雲は、意味深な笑みを浮かべて、慇懃に頭を下げた。


「貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。このことは、先生にのみ、きちんとお話し下さい。他には絶対に秘密です。連絡先は先ほどお渡しした名刺にあります。それでは、ご連絡をお待ちしております」


そう言い残して、東雲は小走りに探偵所を出て行った。第一印象と外見とは違って、最後の方はとんだ性悪女だった。人のことをバカにして、先生しか信用していない。結局自分は役立たずの汚名を着させられたということに、北原は腹を立てていた。その怒りは、間もなく戻ってきた魔法探偵に向けられた。


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