第10話 ゆーちゃん

「因みにアニメの魅力は何と言ってもキャラが生き生きしている点です!燃え上がる感じっていうかです!」


「.....お、おう」


「あはは」


昼飯時になった。

三人で机をくっ付けて腰掛けるってか、何で俺はこんな目に遭っているのか。

クラスで美少女をあんなスクールカースト下位に取られてクラスは憎悪に満ち満ちている。


俺は顔を引き攣らせながらその事も気になったが。

先ず気になった点、それは香澄が全くこっちを見ない。

何故だ?何故、見てくれない。


「.....香澄」


「そうそう。佳菜子ちゃんの髪型、似合ってるよ」


ほらな、こんなガン無視なんだ。

何がどうなっている。

昨日の件は.....。

俺は悲しいぞ、オイ。


「あ、そう言えば師匠。私、師匠の為にお弁当作りました!」


「「「「「!?」」」」」


クラスが固まった。

俺は驚愕しながら、弁当を取り出した佳菜子を見る。

すると、横からスッと目立たない様に香澄が赤くしながら弁当を取り出した。

へ?


(アイツぶっ殺す)


凄まじく憎悪が増した。

俺は冷や汗をかきながら震える。


取り敢えず、気にしない様にしながら弁当箱を見る。

弁当箱は二個だ。

一つはキャラ弁で、一つは一般的なお弁当。

可愛いのだが、ってか。


「.....香澄。お前も作ってくれたのか?」


「.....別に。わ、私は.....」


「香澄ちゃんと協力したんですよ!だから二個です!.....あ、香澄ちゃんも師匠が好きだってで.....」


「「「「「ハァ!!!!!」」」」」


まさかの告白と言い、俺へのお弁当という事で。

教室が一気にフリーズして。

ってか、氷河期の様に凍った。


香澄が真っ赤にボッと赤面して口を塞ぐ。

そして俺を目を回しながら見てくる。

俺は赤くなりながら香澄を見る。


「違うから!?違うからね!ゆ、優雅!」


「.....お、お?」


「え?でも.....香澄ちゃん、昔.....」


「佳菜子ちゃん!!!それ以上言ったら絶交だから!」


真っ赤にこれ以上無く赤面する、香澄。

ほえ!?と衝撃を受ける、佳菜子は悲しそうな顔をした。

って言うか、今、昔っつったか!


「.....おま、いつから俺の事を.....?」


「.....い、言わない!」


「.....」


香澄は真っ赤になりながら頬を膨らませた。

そして教室からスタスタ逃げ出す。

確認してから佳菜子に俺は向く。


「.....佳菜子。お前、自分を考えた事は有るか?」


「.....何の事です?」


「.....」


決まった。

コイツは多分、天然な面も有る。

きっと、だ。

それで口が滑ったと分からないのだろう。


(殺す殺す殺す)


教室が暴走している。

ちゃーらららーららー!

エ●ァ初号機のような感じだ!


「負けませんよ。師匠。香澄ちゃんとの恋ばとる!」


「お前、ちょっともう喋るな」


「.....何でです?」


何でです?

色々と教室がマックスになりつつ有るからな!怖いんだよ!

俺はその様に思いながら溜息を吐く。


「取り敢えず、香澄を追うか.....」


「えー。香澄ちゃんと私、どっちが大切なんです?」


「もう喋るな。教室のボルテージは限界だ」


その様に思い、二つの弁当箱を持って。

その場から逃げ去った。

このまま教室に居たらマジでキルされそうだから。



「香澄ちゃん何処に行ったんです?」


「取り敢えず、遠くには行ってないと思うが」


しかし、香澄が俺を。

俺はその様に思いながら、赤面した。

取り敢えず、滅茶苦茶に嬉しい。


「.....香澄ちゃん.....謝らないとです。何か怒らせてしまったのなら」


「取り敢えず、天然系を伝えとけ。それは優先するべき事項だ」


「は、はい。師匠」


「って言うか、いつまで師匠って呼ぶんだ俺を」


その様に思いながら、追う。

すると、目の前に香澄らしき人物が居た。

俺達を見て驚愕した様にして。

階段から.....あぶねぇ!


「香澄!!!」


「きゃ.....」


香澄は足を滑らせた様だ。

俺は青ざめて落ちる香澄を直ぐに抱く。

そして、そのまま落ちて。



「起きて!起きて!優雅!」


何か、声が聞こえる。

ザワザワした声も、だ。

俺は視界を揺らした。

その次の瞬間、涙声で何か聞こえ.....


「.....起きて!ゆーちゃん!」


「.....!」


ゆーちゃんという言葉に。

俺は見開いた。

そして記憶が叩き起こされる。

と同時に起き上がる。


「.....こ.....此処は.....」


「階段下です.....師匠!!!良かった.....良かった!!!」


佳菜子が縋って来る。

気絶していた様だ。

俺は頭を抱えて、何が起こったか思い出そうとする。


うん?何か、重たい。

見ると、香澄が俺にしがみ付いて居た。


「.....香澄.....!?」


「.....良かった.....ゆーちゃん.....」


俺は香澄を撫でる。

ゆーちゃん.....その名には聞き覚えが有る。


「.....ってか、お前大丈夫なのか?」


「.....大丈夫だよ。ゆーちゃんが下敷きになってくれたから.....!」


「.....そうか.....」


そうだあの名は幼馴染の頃の、だ。

思っていると、涙を拭って涙声で香澄が更に言葉を続けた。


「.....そういう所だよ!ゆーちゃんが私の為に無理するから私.....逃げたんだよ!」


「.....お前.....」


「本当に心配掛けて.....有り難かったけど!」


ゆーちゃん、本当に良かった.....。

香澄はその言葉を連呼しながらただひたすらに涙を流して俺に縋って来る。

俺は周りの野次馬と教師を気にしつつ頭を搔く。


「.....皆んなに知らせた奴は.....」


「.....私達です.....本当に良かったです」


「良かったな。何も無くて」


気が付くと側に担任が立っていた。

俺はその担任を見ながら、すいませんと俯く。

膝を曲げた担任が俺の額を指で弾く。


「.....心配させんな」


「.....そうだよ.....」


「.....すまん」


と二人の言葉を受けながら居ると。

野次馬がモーゼの川の様に分かれた。

と同時に救急隊員がやって来て。


「.....一応、何とも無いとは思うが、病院に行け。分かったな」


「.....はい」


救急隊員が俺を担架に誘導する。

そして乗ってから。

佳菜子と香澄を見る。

心配げな顔をして俺を見ていた。


「.....有難う」


「.....はい」


「うん」


それだけ俺は告げて。

ゆっくりと俺は病院に運ばれ。

診断結果は全身打撲だったが、特に異常は無かった。


その次の日から。

懐かしい呼び名で香澄は俺を呼ぶ様になった。

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(師匠)義兄×義妹(弟子) 〜まともじゃ無い出会い〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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