番外編
#1 すれ違いを見て
魔導士と魔女、その関係は色々あるけれど、私の
二人は互いに互いを物語の登場人物に重ね、それに憧れを抱いている。
それは悪い事、とは言い切れないけど、面倒事には巻き込まれたくないのよねぇ。
だから私は静観し続けていたんだけど。
彼女――
…………。
魔道具を持っている魔法使い達は未だに人間社会への強い影響力を持っている。
魔女っていう戦力があっても魔道具の方が量が多いから、勝てっこないのよねぇ。
だから、魔導協会は魔法使い達に逆らい難いんだけれど、
魔法側の人から咲夜な隼人を隠しながら
まあ、それは主様が加奈ちゃんを素直で裏が無いって勘違いしているからなんだけど。
加奈ちゃん、主様から見えない所で私に敵意むき出してるし、ズルだってしてるのよねぇ。
無断で荷物に紛れたぐらいだし。
主様は、『加奈にそうさせた』って自分を責めていたけど、それは正しい様で間違っているのよねぇ。
以前の主様が認識していた加奈ちゃん像は、言う事を聞く素直な子、みたいだけど、私の知っている加奈ちゃんは、主様の前で可愛らしい素直な女の子を演じている、って印象だから。
物語の魔導士様と重ねた主様から好かれる為に物語の主人公を演じていた加奈ちゃんは、魔導士様に救われるか弱いお姫様、だったから、主様が気付けないのも当然だから、主様が悪いとは言い切れないのよねぇ。
まあ、気付けなかった汚点は間違いなくあるけれど。
責める事じゃないんじゃないかしら。
加奈ちゃんも主様に好かれたくて演じていただけだし、悪いとは思わないかしら。
私?
そうねぇ、私は二人のすれ違いに気付いていたけど、静観していた事、かしら?
でも、それは二人の事柄で、私が口を出す事でない――ってのは後付けなのよねぇ。
本音は、表面的にかみ合っているのに、進歩しない関係を見ているのが面白かっただ、なんだけど。
これは二人に言えないわね。
まあ、二人は本音を打ち明けて、少し深い関係に成れたって事で良かったんじゃないかしら。
…………。
「主様を味わいたい」そう誘った私は「今から、ですか?」と聞いて来た主様は少し、動揺している。
それは、私に誘惑される主様を見る、加奈ちゃんの視線があるから。
「ええ、そうよ」
「後じゃ、駄目なんですか?」
「今が、良いの」
「で、ですが……」
「駄目なの~」
そんな問答をする私たちに「何をしているんですか!」と加奈ちゃんが乱入してきた。
予想通り、食いついて来た。
「何って、仲を深める、肉体言語?」
そう答えた私に。
「なんな深め方、不潔です」
と反論する加奈ちゃん。
食いつくまで良かったんだけど、乗り切れていないのは、まだ開き直っていないから、かしら。
そこで「じゃあ、加奈ちゃんはしないの?」って聞いたら。
「え……それは……」と言って黙り込んじゃった。
やっぱりしたいんじゃない。
そんなことを考えていたら「その辺で……」と主様から止められてしまった。
「良い事、思いついちゃった」と餌を垂らした私に「良い事、ですか?」と主様を食いついて来た。
この状況を変えて欲しい、そんな期待があるのかしら。
でも……。
「ええ、とっても良いこと」
「それは何ですか」
「ふふーん、それはね、三人で一緒にすれば良いのよ!」
私の言葉に「は?」「え?」二人は唖然としていた。
…………。
「何を言っているんですか!」って言う否定的な主様と
「そうです。そんな……そんな……」って言いながら顔を赤らめる加奈ちゃんに私は。
「え、嫌なの?」
と聞いたら「それは」と口ごもる主様は加奈ちゃんに視線を向けた。
主様と目が合った加奈ちゃんは合ってしまった目線を外して「そんなの、駄目です……」と呟いた。
一押し、あったら、加奈ちゃんはいけるかな?
「えー、良いと思うんだけどなぁ。だって、三人でやれば、
私は「共鳴魔導印……」と言った加奈ちゃんに「そう」と確認しながら「他の魔導士はやってるんでしょ」と主様に確認した。
「ああ、そうらしいが……」
まだ、躊躇している主様に「
「それは、そうなんですが」
やると言えない主様は、まだ、加奈ちゃんとの距離を測りかねているのかしら。
ヘタレな二人に耐えかねた私は主様を撫でて、その身体をその気にさせた。
私が主様を独占する事が気に入らないのか、加奈ちゃんも主様の身体をいじめ始めた。
【おわり】
魔女は同じ魔導印を共鳴させて、一人で行うより、強力な魔の力を用いる。
魔女の営み ネミ @nemirura
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