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 かつて、露頭に迷っていた友人からこんな嘆きを漏らされたことがある。曰く、『この世にもし神がいるなら、なぜこんなにも困ってる自分を救済してくれないのか』……と。確かにその心情も、察するに余りある。


 ただ、この世界の何処かに本当にそんな超常の存在が居て……謂れなき信仰と、謂れなき憎悪を一身に背負ってるような、そんな役回りを演じなければいけない”神様”が本当に実在するなら、それは本当に哀れだと思った。

 オーバーワークも甚だしい。






――――The Saviors for "T-87211"――――

Episode.2  Monologue






「確かにその”T-87……えっと……」

「”T-87211”だよ」


 今一度、自身が担当している転生者のナンバーを確認してみた。普通、こんなのは一々誰も覚えない。どの世界にも救いを求めてる人々が大勢いるのだから、当然派遣する転生者も膨大な人数になる。

 もちろん、大きな案件であればプロジェクトチームを立ち上げて、全面的な支援体制を整えるようだけれど……そんな仕事にいきなり新人が関われるわけは無い。


「……その転生者の直衛支援は、確かに今僕が担当している案件ですけどね……。直衛支援といっても、直接に色々と支援できるわけじゃない。あなただって、わかるでしょう」


 ……いわゆる”神”と定義された人々の能力の正体は、あらゆる世界の人々の祈りと嘆きを全方向で感知するだけの能力だった。

 そんな能力はたまったもんじゃない。いわゆる本物のオーバーワークだ、指示が定かじゃない。ただ一言、世界の子等から「神様助けてください」と言われるだけだから、自分でも何をどういう風に支援したらいいのかよくわからない。

 その上、独断先行で仕事を勧めてしまったあかつきには、世界の理から『多大なお叱り』を受ける始末。





 いろいろあるけれど、僕らはとりあえずD棟の屋上に移っていた。

まあ自分の部署の人ではないけれど、仮にも、先輩を、あのまま放っておくのも……。

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”T-87211”の守護者  @tcbn2453

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