”T-87211”の守護者
@tcbn2453
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「……ッちがうちがう、T-87211の場合はそうじゃない! むしろ、こっちだよ!」
―――――最近、矢鱈と僕に絡んでくる先輩がいる……。実に困っている。
「……あの、こっちはちゃんとマニュアル通りにやってるだけなんですけどね。いい加減にしてもらえませんか」
もう怒った。イラッとした態度も隠さない。いい加減にしろよこの阿呆。なんで担当外なのに、そんなにこっちに口出ししてくるんだ。おかしいだろこの人……!
「だから、T-87211の場合はマニュアル通りじゃ駄目なんだよ!!」
「だから、どうしろってんですか!! あんたはまず、ちゃんと自分が担当してる仕事をしてくださいよ!!」
「してるだろ!」
「してねーだろ!」
だから皆困ってるんだろ。この人ほんとあたまおかしい。おかしい人ってほんとにいるんだな。いい社会勉強になったよ。ありがとう。
……ただまあ、僕も一応人間ではある。
中庭の隅っこに縮こまりながら頭抱えてる先輩を、そのまま見過ごすほど、冷徹でもない。
「……ちがうちがう。先輩の場合はこうじゃない。むしろこっちだよ。ほんとは……」
近寄ってみて改めて後悔する。……この先輩は、何かに取り憑かれたかのように、独り言をぶつくさと吐いている。ほんと大丈夫かこの人。このまま踵を返してしまおうか。きっとその方がいい。こんな人に歩み寄ろうとしたのがそもそも間違いだった。そう思い始めた時――――
「うっ―――――」
右足を掴まれた。まあ言うまでもなく……あいつが掴んでるんだ。
「あの……先輩? 離してもらえませんかね」
一応5秒間くらいは待ってみる。――――けれども、それ以上は我慢も限界だ。
「……ッ離せっつってんだろ!!」
―――――まあこんなことでも無ければ、職場の先輩の御尊顔を蹴り飛ばすことなんて無かっただろうさ。出来れば自分としても、こんな事態は避けたかったけれどね。ただ……なぜだろう。
「……すまない」
……この人は、なぜ今謝ったのだろう。
「でも、君に頼るほか無いんだ……!!」
……この人はなぜ、今泣いているのだろう。
「君は……君こそが、今は………T-87211の神様だから……!」
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