第49話:広瀬社長の葬儀

 達夫は、我に返って、まず「妻有の里」人達に連絡するように妻の夢子に言った。そうして2人で手分けして電話かけまくった。1時間くらいして連絡するべき所は連絡し終わり、次に、以前、葬儀で世話になった会社に電話をして、葬儀場の手配をお願いして、打ち合わせの時間と場所を言い、奥さんの広瀬裕恵さんと夢子とその場所に行き、葬儀の打ち合わせをした。


 4日後の午前11時に立川葬儀場を予約してもらい、奥さんの裕恵さんの代わりに事務処理を代行することを了解してもらった。何から何まで、済みませんねと、裕恵さんが泣くのを見て、こちらこそ、いろいろお世話になったので、恩返しは当たり前ですと言った。3日後の1月31日、午後4時から広瀬政夫さんの家でお通夜をして裕恵さんが、来る方、一人一人挨拶していた。


 事務的なことを夢子が手伝い、その晩は、広瀬さんのお宅に泊まり、翌日の告別式に出かけた。10時半過ぎに、立川葬儀場に入り、記帳簿、返礼品などを点検していると、11時になり、続々と葬儀の参列者達が一斉に入ってきたので、「妻有の里」の若手に、名前を聞いて、席に案内するように言い、安田達夫が挨拶して回った。


 百人以上が来て、故人の人脈の多さが忍ばれた。そうして、型どおり葬式は進行して、お墓に行く時、夢子に行ってもらい、達夫は、帰られる方々に「妻有の里」の代表として、お礼と感謝をのべ続けた。中には、東京都知事の名代の秘書さんが来て、名前を記帳していったのには驚かされた。


 そうして、午後5時に全てが終了して広瀬裕恵さんに、お礼を言われたので、また何かあったら、相談して下さいねと安田達夫が言い、自宅へ帰った。帰ると、達夫は夢子と相談して、当面は、2人で協力して「妻有の里」の今後の体勢を考えようと言った。


 広瀬裕恵さんは、会社の事にあまり関わっていなかったので、当面、安田達夫が、「妻有の里」の社長と、専務を決めて、新体制で経営できる様にするしかないと考えた。夢子が、社長は副社長の山村英彦さん、副社長は工場長の張本武雄さんが良いと言うので、達夫も、それで行こうと決めた。


 翌朝9時から「妻有の里」で緊急会議を開いて、安田達夫と夢子から、人事を発表すると、すんなりと社長に元副社長の山村英彦さん、副社長は工場長の張本武雄と決まり、誰も異議を唱える者はいなくて決定した。


 社長の山村英彦さんに財務情報や経営状態については、時間をかけて、覚えてくれれば良いと達夫が言い、副社長の張本武雄さんには、会社で決定したことを、みんなに伝える役目をして下さいと話した。2人ともわかりましたと言い、とりあえず慣れるまで、達夫から指示したり、説明したりしますと言うと、助かりますと、喜んでくれた。


 2021年になっても、海外から、東京や日本に来る人は多く、簡易ホテルの中食の需要は衰えずに、順調に販売を伸ばしていき、投資の回収も順調に進んでいった。そうして、達夫は夢子に、これから投資の回収が終わったり、現在の状況を維持して給料を払い続ける事に専念していければ良いのではないかと話すと、それしかないでしょと、言うことになり、達夫は、社長の山村英彦さんと副社長の元工場長の張本武雄に、この話を伝えた。

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