第22話:妻有の里に三井銀行の融資
後日、豪華な五月人形と大きな鯉のぼりは、デパートから、送ってくれる事になり、「妻有の里」に立ち寄りると店の人が、入れ替わり立ち替わり、生まれたばかりの健一の顔を見に来ては、可愛いねと言ってくれ、奥さんは破顔一笑だった。
店長が、いつ頃、復帰できると聞くと7月頃、出て来ますと言い、最初は、朝10時から夜8時までで良いですかと聞くと、8時間勤務で良いから。11時から7時までで良いと言ってくれ、了解しましたと答えた。店長が、実際、料理しなくても、チェックをして、指導して欲しいと言ったので、気を使ってもらってありがとうとお礼を述べた。
食後、挨拶して、自宅へ戻った。6月、梅雨時期は、オムツが乾かなくて困った。梅雨明けの7月15日に、電話して、来週月曜の17日から、店に出ますと「妻有の里」の店長に連絡した。やがて、夢子さんの仕事が始まった。達夫は、相変わらず、定時に出勤して、定時に帰る仕事の毎日だった。
妻有の里の別館にも、近くのマンションの人が来るようになり、忙しくなったが、チキンの持ち帰りと、タンドリーチキン定食、唐揚げ定食が売れ行きだった。持ち帰りも含め、鳥の関連商品の売上が「妻有の里」の利益の7割も占めていた。
夢子さんが給料を月給制でなく時給で払ってもらった方が良いと店長に言うと、そう言うならそうしようと言い、時給1200円にしてくれた。暑い夏を迎えると、2時からの休憩時間に、店長がエアコンの効いた部屋に布団を引いて、夢子さんを寝かせてくれたり、気を使ってくれたと聞かされた。たまに、達夫も妻有の里に昼飯を食べに行き、唐揚げやタンドリーチキンを実家の両親のお土産に買っていった。
秋風が吹き、10月になり、足早に寒さがやってきたと思うと12月、今年の年末の達夫の資産は堅実な貯金と、郵便局の定額貯金などで、1250万円に増えた。
やがて1981年を迎えた。両親と家族3人の5人で、タクシーで諏訪神社に、初詣でに行き、家族の健康と「妻有の里」発展を祈願した。その後、1月の寒い日に、達夫さんから「妻有の里」に電話がかかり、夢子さんに、2人目の赤ちゃんができた様だと連絡が入った。
夢子さんが家に帰ってきて、産婦人科の先生に、予定日が1981年7月28日だと言われたと知らせてくれた。その話を達夫の母に話すと、また喜んでくれ、今度は、女の子が良いねというと、父が、どっちでも健康な子なら良いとぼそっと話した。夢子さんが、また、お世話になりますというと、母が、顔を見るのが楽しみだよと笑った。
7月下旬から、また産休に入ることになりますと、「妻有の里」の店長に伝えた。達夫は、入社して10年目にして総勢5人の電算部の課長に就任し、年収は特別手当込みで1千万円を超え、同期入社の大卒さんの年収を超えた。
この頃、三井銀行の電算化委員会の委員に選ばれ、使うべきソフトウェアの話をするまでになった。夢子さんと健一は、母屋の床の間で生活し、両親が、初孫の健一をうれしそうに面倒を見てくて、達夫は実にありがたいと思ってはいるが気恥ずかしくて直接、言えなかった。
年が明けてからも妻有の里のスパイシーチキン、鳥関連商品の持ち帰りが好調で、店長、今年は、総菜屋みたいに、持ち帰り専門の店舗も出店しようと考えていた。それには銀行からの融資が必要で困っていたとき、夢子さんの旦那が銀行員だと言うことを思い出して、達夫の所へ電話してきた。
この当時、あまり景気が良くなかったので、銀行側では是非、話を聞こうと言ってくれ、「妻有の里」の定休日の水曜日に、店長の広瀬政夫さんを三井銀行立川支店に呼んで、現状の売上と純利益と新しい事業計を聞き、利益率の高さを評価し、融資の件、承りますと融資部長が言った。
新しい店舗は、今後の展開も考えて、立川、国分寺、三鷹、武蔵境、吉祥寺、荻窪駅前に5店舗人数は1店舗4人として合計20人で考えていると言った。融資金額は5千万円をお願いしますと店長が言うと、了解しましたと、融資部長が言い、融資が行われることになった。
その頃、パートさんが38人で調理師を目指す新入社員が5人入り大所帯になっていた。その後、店長の広瀬さんが不動産屋を回って5店舗の候補を6つ探してきた、副店長と話あって、多少高くても、良い立地の5件を選び、不動産屋に電話した。翌日、契約に行き、必要な機材を購入する手はずを整え、3日後に各店舗に設置完了して、若手の加藤貴之、北島智と山北幸雄の3人を店長にして、パートのおばちゃんでベテランの20人を交代で派遣して働いてもらうことにした。そして、新たに20人のパート・アルバイトを雇った。
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