第18話:麻婆豆腐達人の入社

 この話を来週、店長から、採用予定者に、電話を入れると言う事になった。合格予定の2人に店長が事情を話して、来年の春までに、正式に回答する事で了解してもらった。そうして8月の夏休みを迎えると家族連れで、休み時間を減らすほど、店は繁盛した。


 あまりの繁盛に、急遽、アルバイトを3人雇ったほどだ。9月に入っても勢いは、衰えず、三波春夫先生が来店した店として、口コミで広がったらしい。夢子さんは疲労困憊の日々が続いた。しかし睡眠時間と食事で何とか乗り切って涼しい10月を迎えた。


 この調子でいけば、昨年の利益3割増しとなると店長が言った。その理由は、今年春からメニューに加えたへぎ蕎麦のサイドメニューのタンドリーチキンとニンニクをきかせた鶏もも肉の唐揚げ、バンバンジーが馬鹿売れしたためだった。鶏もも肉の原価率が、実は全メニューの中で一番低く、一番儲かった。これら料理の写真を大きく貼ると、持ち帰りたいと言う、お客さんも出て、仕方なく、単品での持ち帰りOKにしたら、大ヒット商品になった。11月、12月も売れ行きに変化はなく、12月のクリスマスを迎えた。


 既に12月20日で、純利益、対前年32%成長以上は確実になった。そこで、2人の合格者に電話して採用決定を知らせて、こちらに来るのは来年の4月までに決めてくれることで良いと連絡すると、喜んでくれ、来年1月に、いつ頃行くか、決めて、電話すると言われた。


 そして1978年を迎えた。1月1日だけ、休みにして、1月4日水曜日の定休日に店長が計算して1977年は、純利益が対前年38%の増加で7千万円となったと言い、本来なら、給料を上げたいのだが、新しいコック2人採用と、場合によっては、もう1店舗増やすかも知れないので、その資金のために、資金を取っておくために、給料アップは勘弁して欲しいと言うと、従業員は納得してくれた。


 ただ、金一封として、昨年同様の金額で支給することを決めた。翌週、採用した人達から電話が入り、麻婆豆腐の張本康男さんは1月15日に出勤でできるようにすると連絡が入り、水餃子の陳澄男さんが2月の第1週までに出勤できる予定で就職すると言ってくれた。


 そうして、1月15日に張本さんが出社してきた。出社早々、今作っているタンドリーチキンと唐揚げのスパイスを麻婆豆腐の様に爽やかな辛さとシビレのある味付けにして欲しいと依頼した。その日のうちに、試作品を3つ作り上げてきた。檄辛、中辛、並辛、この3つを見本において、お客さんに選んでもらおうと言うことになった。そして、明日から作ってもらうようにお願いした。


 出来上がったチキンの写真を貼って、旨そうなキャッチフレーズを店長が考えた。超辛旨、辛旨、並辛旨と名付けた。翌日から思ったとおりに、タンドリーチキンが売れ出した。それが、ほとんど持ち帰りとなって、サイドメニューから、看板メニューになった。これが欲しいので行列ができる日ができるほどの人気になった。調味料は店長が、販売元から取り寄せる交渉もして、購入原価を下げるようにした。

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