第17話:コックさんの試験

 この年、新潟日報に、東京・立川の新潟料理店「妻有の里」で、40歳までの若手料理人と募集する記事を載せると、10人の応募があり、11月の第2水曜日11月9日に10人と面接する事になった。面接には、店長と、夢子と副店長の3人が出席した。


 実地試験は、エビ天・へぎ蕎麦と玉子丼と自分の得意料理1つの3つを1時間以内に仕上げて、12時から13時がA、B、Cさん3人同時に、13時10分から14時10分もD、E、Fさん3人同時に、最後、14時20分から15時20分が、G、H、I、Jさん4人同時に試験することにし、計10人の実地試験を行う事にした。


 応募の用紙を見ると、有名なホテルのコック、有名温泉旅館のコックなど、コック歴10年以上のベテランばかりだった。最初の3人は、新潟駅近くの有名ホテルのコックAさんと、老舗の料理屋の主人の弟Bさん、中華料理屋の2代目の弟Cさんだった。


料理の印象は、Aさん、Bさんは、無難な味付けで、上品であったが、個性が弱い。ちなみに、得意料理はオムライスだった。玉子丼も無難な味付け。Cさんは。蕎麦の茹で方がいま1つ、天ぷらは問題ない、得意料理は麻婆豆腐これには、驚いたくらいの上手い味で辛いだけでなく、鼻に抜ける独特の上品なしびれというか、辛みがすばらしい1品。


 13時10分からの試験のDさん・リゾートホテルの経営者で料理得・Eさん・新潟の有名店の第三のコック、Fさん・和風料理で有名な高級旅館の副料理長だった。


料理の結果は、Dさん、(全体的にいま1つ、可も無く不可も少ない)Eさん(蕎麦の茹でOK、玉子丼も基本通り、カレーライス(甘味があり悪くはないがパンチ不足)Fさん(蕎麦はOK、天ぷらは上手、玉子丼も見た目が綺麗、すき焼き(旨いが、食堂で出す料理ではない感じ)。


 最後の14時半からの試験の4人グループ、Gさんは、新潟の有名デパート最上階の食堂レストランの副料理長、Hさん(中国から帰化した調理師のお父さんの次男、長岡の中華料理店、副料理長)Iさん(新潟の老舗高級ホテルの副料理長)


料理の評価は、Gさんは、蕎麦は合格、玉子丼も合格、ナポリタン・男、長岡の中華料理店、副料理長)I(新潟の老舗高級ホテルの副料理長)Gさんは、蕎麦は合格、玉子丼も合格、ナポリタン・スパゲッティ(昔風の甘めの平凡な味)、Hさん、蕎麦は合格、天ぷらも合格、水餃子(豆板醤入りの辛いソースで食べる。)旨いの1言。


 合格の判定には時間がかかるので、後日、電話で知らせることにして、受験された方には、全員、お引き取りいただいた。皆さんの料理は、全て、残しておいた。


 店長が、夢子と副店長に一番、二番に旨かった料理はと聞くと、店長がCさんの麻婆豆腐、Hさんの水餃子、夢子も店長と同じだった。副店長は、Cさんの麻婆豆腐とFさんのすき焼き、これを合計すると、Hさんの麻婆豆腐3票と水餃子2票、Fさんのすき焼き1票となった。


 店長がみんなの考えの中に、へぎ蕎麦とか新潟料理というくくりではなく、新しいものを取り入れたいという気持ちが、強いことが良くわかった。かといって、メイン料理が何かわからない店では、困る。


 しかし、日本料理屋の裏メニューのカレーとか、フランス料理屋の裏メニューの中華風シーフード・チャーハンとか、メイン料理に、1つパンチのある料理として、裏メニュー的に入れるか、2つ目の柱の料理として提供するかのどっちかだと言うと、夢子が、やはり新潟料理屋の裏メニューの絶品・麻婆豆腐の方が良いと言い、もし、想像以上に繁盛して、多くの支店を出せるようになった時は中華専門店として独立するのは、良いが、それには、まだ早すぎると思うと言った。


 副店長は、夢子に賛成した。店長も、その方が、無難かも知れないと、意見がまとまった。店長がもし、今年、昨年の2割増し以上の利益が出れば、2人、麻婆豆腐、水餃子とも、来年春に雇い、それ程でもなかったら、1人麻婆豆腐だけ雇うと言う事にしたいが、どうかと言うと、他の2人とも、賛成した。 

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