第13話:夢子と達夫の生活開始2

 一休みして、7時に母屋へ、夕食を食べに行くと、母が今日はアジの唐揚げですと言いて、食卓に出した。その時に母が、彼女に、「食事で嫌いな物はありますか」、と聞くと、「特にありません」と答えた。その時、達夫が、「母に、そんなに気を使わなくて良いよ」、言うと、「そう言う訳にはいかないのよ」、と笑いながら言った。そして、達夫が、「父は、必要意外、話をしない、寡黙なタイプだ」と話した。


 風呂に入ってから、離れに戻って、早めに床についた。翌日は、疲れもあったせいか、8時近くに起きた。母屋へ行き、トーストと珈琲の朝食をいただき、その後、納屋の2台の自転車を持って来て、潤滑油さしたり、錆びを落とし、整備し、空気入れて、タイヤの状態を見て、使えそうなので、10時過ぎに、試しに、隣駅、立川まで2人で、走らせてみた。達夫が、彼女に「自転車、乗れるよね」と聞くと、「田舎で、嫌と言うほど乗ったわ」と笑った。


 丁度、女性用と男性の自転車だったので、直ぐに、出かけた。達夫が先導し、彼女が後について、出発した。「車の通りが多いから、注意するように」言った。太い道から、細い道に入り、電車の線路沿いに、5分位すると立川駅の大きなビルが見え、数分で、今度、勤める料理屋に到着した。その店の暖簾をくぐって、夢子が、店の仲間に、「明日から、出勤しますので、宜しくお願いします」と挨拶した。店の人が、自転車出勤とは、珍しいと、驚いていた。


 「電車賃がいらないのは助かるわ」と彼女が笑いながら言い、立川の昭和記念公園へ自転車で行って、駐輪場に止めて、広い公園内を散策して歩いた。夢子さんが、「このあたりは、畑や木々が多く、こんな素敵な公園があり、都心と言っても、生活しやすそうですね」と言った。次に、達夫が、「この周辺を武蔵野と言って、地盤が固く、関東大震災の時でも、多くの家が密集していなかったため、古い建物が残っているんだ」と説明すると納得していた。その後、16時過ぎ、家に戻り母屋へ行き、お茶を飲んだ。


 その時、夢子さんが、母と、武蔵野の事、昭和記念公園の事を色々と話した。「今夜の夕飯は、近くの美味しいコロッケ屋さんでメンチ、ハムカツ、コロッケを買ってきますので食べて下さいね」と言うと、達夫が、「意外とうまいんだよ」と、彼女に耳打ちした。


 その後、離れで、少し休んでから、彼女が、明日、仕事に行く時の服や、割烹着などバッグに入れて、忘れ物をしないように用意していた。その時、達夫が彼女に、「銀行は、どこを使ってるのと聞くので第四銀行と答えると、日本橋に支店があったね」と言い、今後、「俺の勤めてる三井銀行に口座を作ってくれないか」と話すと、「えー良いわよ」と言い、近いうちに作りますと答えた。


 その後、19時前に、夕飯を食べに母屋へ行った。揚げ物を食べ始めて、夢子さんが、おいしいわねと言うと、母が「達夫は小さい頃から、これが大好きでね、我が家では、何かあると、これを買いに言ったものよ」と笑いながら話した。夢子が、「味噌汁も、だしがきいて美味しいわ」と喜んでくれた。その晩、彼女は、明日の仕事のことを考えたのか、なかなか寝付けない様だったので達夫が、「人生なるようにしかならないから自然体で行った方が楽だよ」と励ました。


 その話を聞いて、彼女が、達夫さんは、優しいのねと、と言い、抱き付いて泣いた。その後、若い二人は、ご想像の通り、元気に任せて、夜の仕事に励んで疲れ、爆睡した。彼女は翌朝6時に起きて、持ち物を点検したり、念入りに、化粧したりしていた。まだ、寝ていた達夫が、その物音を聞いて7時前に起きた。


 7時半頃に、母屋で朝食をとり、食事を終えた時、夢子さんが、「今日から仕事に行きますので、いろいろお世話になりますので宜しくお願いします」と達夫の両親に挨拶して、母が、「わかりましたと答えると、無口な父が一言、自分の夢に向かって頑張りなさい、後のことは、私たちに任せれば大丈夫」と口を開くと、夢子は、感極まって泣いてしまい化粧が落ちてしまい、離れに行って、急いで化粧を直して、自転車で立川の仕事場へ出かけた。

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