第12話:夢子と達夫の生活開始1

 話の中で、彼女は、「今回、立川の店での仕事を盛り立てていく気があり、頑張って働く」と言った。その姿は、昨年の様な、優柔不断な気持ちは、みじんも感じられず、やる気がみなぎっていた。スタッフも全員、若く東京で「妻有の里」新潟料理の店を繁盛させるんだという意欲が感じられて良い雰囲気だった。そして、何より、住む場所が、近くにできたのが心強いようで、達夫を信頼しきっている姿が、いじらしかった。


 そういうこともあり、たっぷりと逢瀬で汗をかいて、風呂に入って、達夫は眠ってしまった。しばらくして、そろそろ起きてと、夢子に言われると、夜20時近くなっていた。急いで、身支度をして、チェックアウトした。


 上野駅で、夕食の場所を探し、寒いので、ラーメン屋に入った。夢子が、「来月、ゴールデンウイーク開けの5月7日の夜20時頃に、身一つで来るから、宜しく」と、言い、「来月からの東京の新生活が楽しみだわ」と笑った。


 達夫が、「でも、料理屋を立ち上げ、軌道にのせるのは、大変だぞ」と、言い返すと、彼女が、「こう見えても、お客さんの扱い方はうまいのよ」と言い、達夫の肩をたたいた。それに対して、「達夫が、まー、無理しない程度に、頑張れよ」と笑って返した。そんな話をしてるうちに21時近くなり、店を出て、達夫は、彼女も見送って自宅に帰った。


 達夫は、家に、帰ってから、「1975年5月7日から、夢子さんが、俺の所に住むから、宜しく」と、両親に告げた。母が、「うまくやんなよと言うくらいで、平然としていた」。そうして、いつもの生活に戻り、1ヶ月が過ぎ、5月7日を迎えた。仕事を夜18時半に終えて、電車で上野駅につき、19時半、上越線の改札口で待っていると、階段の上から達夫さんと言う声がして、大きな荷物をかかえた、夢子さんが階段を下りてきた。


 改札の人に言って、駅構内に入り、彼女の大きな荷物を持って、出て来た。食事をしてから、上野から東京で電車を乗り換えて国立駅へ、国立駅からは、荷物が大きいのでタクシーで達夫の家まで行き、荷物を離れの部屋に置いた。


 「明日は土曜日だから、午後から、彼女の必要な生活道具を買いに行こう」と言った。「いつから仕事に行くの」と聞くと、「来週の月曜1975年5月12日から行くと店に話してある」と言ったので、「土日で必要な物は全て、買いにいける」と伝えた。その後、母屋に行って、「夢子が、内田家の人達に、宜しく、お願いします」と挨拶すると、達夫の母が、「夢子さん、長旅、大変だったでしょー」と言い、「すぐ、風呂に入りなさい」と言ってくれ、風呂に入った。


 その後、達夫が風呂から上がり、彼女と、両親に、今後、お世話になりますと、改めて、挨拶すると、「何かあったら相談してね」と、母が、彼女に優しく言うと、涙を浮かべるので、母も、もらい泣きして、肩を抱いて泣いた。


 少しして、2人は、離れに戻り、夢子は、疲れたのか、直ぐ、眠りについた。翌朝、母屋へ行き、朝食をいただき、その後、彼女は、達夫の部屋を掃除した。内田が、昼過ぎに帰ってきて、「立川に必要な物を買いに行こう」と言った。


 達夫が、「何か新婚さんになった様な、変な気持ちだ」と言うと、彼女が、「早く本当の夫婦になりたいねと、抱き付いて頬にキスした」。今朝は、妙な気持ちで、家を出て銀行へ向かった。昼過ぎに銀行を出て13時前に家に着き、昼食をとった。


 母に、「立川に行くが、何か買ってくるものはないか」と聞くと、特にないと言った。その時に、母が、夢子さんに、「私たちは、早めに洗濯するから、夜20時過ぎには洗濯機を自由に使うと良い」と言ってくれた。達夫達は、離れの部屋で一休みして、10時に立川へ向かった。


 近くのホームセンターへ行き、小さなタンス、整理タンスと化粧台を買った。その店では、5千円以上買うと、1時間無料で、軽トラックを貸してくれるサービスをしており、幸い、まだ早いので、車が空いていたので借りて積んで帰った。


 10分程で、家に着き、家具を台車に、乗せて運び、決めた場所に設置し、直ぐに、作業を終えて、ホームセンターに戻り、11時前に、借りた車を店に返した。その他、洋服や化粧品、その他、諸々、必要な物を買い込んで15時過ぎには、全て完了して、喫茶店で、お茶してから、家に戻った。全ての作業が終わったのは17時過ぎだった。

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