第7話:夢子の東京見物1

 10時半、新潟発の列車に乗って座席について、彼女の言動、行動が、気になって仕方がなかった。そうしているうちに、電車の心地よい振動で寝てしまった。起きると高崎に到着する前で、2時間以上寝た。上野駅から山手線、経由、中央線で自宅へ帰った。そうして、翌日から現実的な仕事の日々が続いた。それでも、山の仲間の営業の山田君や、佐藤君の様な厳しいノルマがあるわけでもなく、計算さえ間違わなければ給料、ボーナスをもらえ、毎日、定時に入行して、帰る、退屈な毎日が続いた。


 そして1974年4月12日に、竹下夢子さんから、電話が入り、「来週、東京へ行きたい」と電話が入り、「いつ来るのか、聞くと土曜、日曜の1泊2日」と言うので了解した。丁度、この週は土曜日、朝から、翌週の火曜日まで両親が、旅行へ出かけていて、留守だった。そこで自分の使っている離れに、彼女を泊める事にした。


 その話をすると、「宿をどうするか、相談しようと思っていたので、良かった」と、喜んでくれた。1974年4月18日、土曜の昼12時に、上野駅の上越線改札出口を出ないで、待っているように伝え、土曜、有給休暇を取って彼女を出迎えた。すると彼女が心配そうに、安田の来るのを待っていた。安田を見つけると、「安田さんと大きな声を上げ、手を上げて答える」と喜んでいた。改札を出るなり抱き付いてきた。恥ずかしいよと、言うと、直ぐ離してくれた。


 まず、上野駅構内のレストランで食事をして、上野動物園のパンダを見てから、銀座をぶらつこうと言った。レストランで朝食を待つ間、「彼女が東京はやはり、人が多いね」と、驚いていて、「よく、これで息が詰まらないね」と言った。「その時、彼女に、パンダ見たいか」と聞くとそうでもないと言い、動物園はと聞くと、今ひとつと言うので、銀座はと、聞くと行きたいと言い、その他は、と聞くと、渋谷、新宿というので了解した。


 昼食後、有楽町で下りて、銀座松屋をみて、最初は、「デパートって素敵、綺麗なドレス」とか言っていたが、「人が多いので、もういい」と言い、1時間足らずでデパートから出た。そこから、山手線で渋谷へ行くと、「若者が多い町ね」と言い、「テレビで見たより、狭くて小さい町だね」と言った。渋谷東急百貨店に入ってみたが、やはり人混みに負けて、直ぐ出て来た。


 次に新宿に行き、小田急デパートをみて回ったが、少し見て、もういいと言った。少し疲れたろうと言い、「歌舞伎町近くのモーテルで、休んでいこうと誘うと、歩いて入るの」と聞くので、そうだよと言うと、驚いていたが、「東京周辺のモーテルは、駐車場付きなんてないんだ」と伝えた。仕方ないと言い、「歩いて、素敵なモーテルに入ると、高そうなホテルみたいね」と言って、チェックインすると、「豪華な内装に驚いて、新潟には、こんな素敵なホテルないかも」と言った。


 買ってきたワインとつまみを出して、乾杯して、シャワーを浴びて、久しぶりの逢瀬をしっかりと、ゆっくり楽しんだ。「ビデオでも見るかとつけてみると、すごいと言い、それに刺激されて、つい延長してしまった」。そうして、チェックアウトして、新宿から中央線で20分、国立駅について、タクシーで5分で安田の家に、到着。「わー、すごい、新潟の農家みたいに広いね」と驚いた。


 離れに行くと、「この離れを1人で使ってるのと聞くので、そうだよと答えると、良い、ご身分ですね」と笑った。2人で風呂に入って、温まり、布団に入ると、若い安田は復活して、また、逢瀬を楽しんだ。終わると、彼女が「あんた、ほんとに、好きね」と笑った。


 布団を2つ敷いて、その後の彼女の新潟での話を聞かされた。彼女は、叔母さん家に住み、食堂とスナック・小料理屋で仕事をして、月岡温泉で人手が足らない時に、アルバイト芸者、コンパニオンのアルバイトをしているようだ。でも「将来は、東京、横浜、首都圏に、住みたいと考えて、少しずつ、お金を貯め始めたのよ」と言った。

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