第6話:夢子とスキー2
彼女が、「これで、もう、大丈夫、このスキー場、どこでも滑れるわ」と話してくれた。次に、「さっきの2倍くらいの距離を滑って待ってます」と告げた。また、リフトに乗って、一番上のゲレンデまで行き、再度、身体をほぐし、彼女が勢いよく滑り出した。彼女が、米粒みたいに、小さく見える所まで一気に滑り降り、着いたのを確認してから、安田が滑り始めて、後傾と膝の屈伸、体重移動に注意して、滑り降りた。
一度も転ばすに、滑れ、ひと安心した。彼女の所に到着すると、「完璧、もう教えるところはないわ、大丈夫」と太鼓判を押してくれた。「じゃー行くわよ、ついてきなさい」と滑り始めたので、直ぐ、その後をついていったが、彼女のスピードには、ついて行けず、直ぐに引き離されてしまったが、自分のペースを守って、基本に忠実に滑っていた。
彼女が、安田のスキーを見て、「力任せのターンではなく、スムーズなターンで良くなった」と言い、「こんなに上手だとは、思ってもみなかったわ」と笑った。「また、次回、スキーする時、志賀高原や白馬、栂池の5kmのダウンヒルを一気に、一緒に滑りたいくらいだわ」と、お世辞を言った。
次、「一緒に滑り出して、どっちが一番下のゲレンデにつくか、競争しましょう」と言って、直滑降で、滑り出したので、負けじと、直滑降でついていった。しかし、スピードが怖くて、直ぐに、パラレルターンを始めて、彼女が視界から消えてしまった。それでも緩斜面では、直滑降で、滑って、スピードを上げて下りていった。
下で待っていた、彼女は、「全部、直滑降で滑ったわ」と、興奮気味に話した。「こう言う調子に乗ってきた時に、スキーの事故が起きるのよ」と言い、「一休みしよう」とゲレンデのレストランに入って、ショートケーキのついた珈琲、紅茶セットを頼んだ。彼女が、「あなたと滑るの楽しい」と、抱き付いてきたので、「恥ずかしいからやめろよ」と、照れると、「安田さんの顔、可愛い」と、ふざけて言った。
こうして、何回か滑って、遅い昼食をとった。その後、15時近くなったので、レンタルスキーを返して、彼女がハイエースで、新潟駅まで送ってくれた。帰りの車の中で、彼女が、「明日から仕事」と聞くので、「いや、明後日からというと、もう一晩泊まってよ」と言った。安田は、「何て答えたら良いかわからず、困っている」と、「大丈夫だよねと、彼女が決めてしまい、とても、駄目だ」と言えず、黙っていた。
そうしているうち、新潟市の郊外のモーテルにチェックして泊まる事になった。彼女の気持ちが、わかるような気がして、彼女のなすがままに、時を過ごして、ゆっくりと、激しい逢瀬を楽しむことになった。彼女は、まるで、自分が生きてる証を求めるように快楽に浸っていた。
それを冷静に、見ている自分が、情けなく思えてきた。 ただ彼女が、楽しんで、笑顔になってくれる事がうれしかったのかも知れない。快楽の内にある奈落の底に落ちるようなスリル感、非日常感が安田にとってたまらなかった。夜の更けるのも忘れて、ただひたすらに逢瀬の快楽を楽しんで、時間が過ぎていった。
その後に訪れた、激しい疲れで、いつの間にか、まるで、泥の様に、深い眠りについた。深い眠りから覚めると、もう、日が上がっていて、朝9時になっていた。急いで、身支度をしてチェックアウトして、車に乗って、近くのレストランに入り、朝食をとって、今回のスキーの事を話した。帰り際に、彼女が、「今度、電話して、東京へ行く時に、東京案内してくれる」と、上目遣いに、話すのを聞いて、「良いに決まってるだろ」と、笑いながら答える安田に、安心したのか、良かったと言って、うっすらと涙を浮かべた。
何か、田舎の得体の知れない呪縛に、がんじがらめにされて、一生懸命に、その呪縛から、逃げたいという願望が、ひしひしと伝わってきた。「今年の春か、秋に、また電話するね」と、確認するかのように言った。安田が、「了解しましたと言い」、席を立つと、彼女がふざけて、腕にしがみついてたので、「恥ずかしいよ」と笑った。その後、会計を済ませて、新潟駅まで送ってくれた。
車中で、「何か、散財させちゃってごめんね」と言うので、楽しい時間だったよと言うと、突然、泣き出した。それは、まるで、早く、私をここから連れ出してとでも、言ってるように見えた。その後、駅で、安田を見送る時、しばらく、安田に、しっかり抱き付いたまま離れず、恋人のような、別れだった。別れる瞬間、彼女が、突然、我に返って、「じゃー、これで、さよなら」と、寂しいそうに言って、去っていった。
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