泥棒稼業に精を出すサラリーマンがいた。ただし欲しいのは金や物ではなく、スリル。それを求めて彼は目をつけていたアパートの一室に忍び込み、女の他殺死体と、彼女の娘である盲目の少女を発見する。
彼は少女を騙すために警察官を名乗り、本物の警察が来るまでの間、女の死の理由を探ることとなった。
探偵役は泥棒。情報源は小さな女の子だけ。タイムリミットはあとわずか。
そんな設定で開始する推理ものですが、舞台の作り方がうまいですねぇ。下手に逃げれば女の子の口から警察に伝えられるかも――という逃げ道のなさが、後ろ暗い主人公を自然に探偵として仕立て上げてるんですよ。
しかもその立場が女の子との交流の中でも生かされてて、苦いんだけど甘みもしっかり感じさせるドラマを実現してます。
さらには最後のオチで、それまで積み上げてきたものを全部ひっくり返す構成。短編ミステリの醍醐味はこれですね!
さらっと読めて鮮烈な読後感が得られる一作です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)