バレンタインデー紛争

夜坂中学新聞部 事件簿一覧「第一次バレンタインデー紛争」

　第一次バレンタインデー紛争

　非モテの解放を叫ぶチョコレート共栄党と治安維持を図る生徒会及び風紀委員の間で起きた紛争。（翌年に勃発したバレンタインデー紛争と区別するため、第一次とする）

　両陣営合わせて八十名を超す人員(全校生徒の約四分の一ほど)が紛争に参加し、夜坂中学の中で起こった紛争の中で最大規模を誇る。

・ここまで戦線が拡大した理由

わが校の非モテが最低でも四十名を超すこと、チョコレート乞食という潜在的な反乱分子が存在したこと、共栄党の最高指導者である陣内凜ノ助の人望が上げられる。そのために共栄党が誇る兵力は最盛期には四十名まで膨れ上がった。

　戦闘は一進一退であったが、生徒会は貴重な初動を無駄にしたため被害を拡大させ、共栄党もまた戦略目標を見失うなど両陣営ともに失敗を犯している。

　・燻ぶる火種

　しかし、この事件では生徒会・共栄党双方とも「恋愛至上主義」に打ち克つだけの新しい価値観を提示することが出来なかった。

　「恋愛」というものが自由競争となった結果、格差が出来てしまうことは当然のことである。共栄党はそれに抗おうと恋愛の自由競争というものを排し、平等に統制された恋愛を打ち出そうとしたが、これは「恋愛至上主義」を裏返しただけに過ぎない。

　「モテ」「非モテ」という秩序をいくら破壊しようとしても「モテ」「非モテ」という絶対的な軸を前提で行っているからには、それらは残ってしまうのである。

　非モテの苦しみを解放するだけの価値観を両者ともに見つけられなかったために、夜坂中学の「非モテの真の意味での解放」は凛ノ助・銀林の演説では遂には成し得なかった。

　翌年に勃発する、第二次バレンタインデー紛争（別名、夜坂中総Vtuber化計画）への火種を燻らせたまま、今事件は終了となったのだ。

交戦勢力　　生徒会執行部及び風紀委員会　×　チョコレート共栄党

傘下勢力　　・剣道部女子　　　　　　　　　　・剣道部男子

　　　　　　・空手部　　　　　　　　　　　　・チョコレート乞食

戦力　約２０名と傘下の部活１０名　計３０名　　　約４０名

　　・生徒会執行部７名　　　　　　　　

　　・風紀委員会１３名

損害　　　８名が軽傷　　　　　　　　　　約１９名が負傷　２５名が身柄を拘束

総指揮官　　風紀委員長　　飯尾透　　　　　　共栄党最高指導者　　陣内凛ノ助

　　　　　　副生徒会長　　銀林修斗

参謀格　　　　生徒会執行部　　黒崎琴音　　　共栄党副指導者　　日向真希時

隊長格　　　　一班班長　相浦康介　　　　　　共栄党幹部　 前島憲政

　　　　　　　ニ班班長　西村葵

　　　　　　　三班班長　吉住英俊

　　　　　　　四班班長　東　裕仁

　　　　　　　五班班長　利根幸輝

　　　　　　　六班班長　荒川大吾

　　　　　　　七班班長　加藤陽子

　　　　　　 空手部部長　鬼道大河　　　　 　共栄党幹部　後藤翔太

　　　　　　 剣道部副部長　 暁月つかさ

結果　　生徒会の戦略的勝利、共栄党の戦術的勝利(実質的に共栄党が大将首を取るも、共栄党のチョコレート分配が成功せず、暴動は鎮圧される)

戦後処理・賠償　

・器物損壊の費用に一万円、共栄党指導者は頭を丸め敗戦の責を負った　　　　

・共栄党幹部が、共栄党員に対し「敗戦賠償費」としてそれぞれ一千円を支払う

・共栄党員は三ヶ月に及ぶ強制労働（教師、生徒会執行部の手伝い）

・生徒会・共栄党双方、一週間の個室での特別指導（重罪の者は二週間）

・燃やされたチョコレートの賠償は生徒会長のチョコレート・パーティーによって不問

戦後の影響

『生徒会の許可無くしての学校内での私設サークル・集団を作成するこ　　　　　　との禁止』

『学校内外を問わず「共栄党」を賛意・称揚した者は厳罰に処す。およ　　　　　　び「共栄党」を賛意・称揚した者を見かけた場合は風紀委員会に必ず　　　　　　報告すること。報告しなかった者も処罰される』

　という新しい校則ニヶ条が全校集会の多数決で可決され、校則に加　　　　　　　わった。

　また本事件の衝撃は極めて大きく、四ヶ月後の悪名高い『非常事態　　　　　　宣言時における生徒会大権』の成立の基となった。

　この結果は一般生徒に対しての生徒会・風紀委員会の監視の目を強めた。

　特に共栄党幹部四名には一週間ごとに風紀委員会による調査が行われ、もはや共栄党の復活は不可能となった。

｛事件簿の最後に新聞部員のボールペンの走り書き｝

「本当に彼ら共栄党が欲していたものはチョコレートだけでは無かったようだが、それを手に入れることが出来たのかどうかは、謎である」