最終話 リバイバルゲーム

ってことは…。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「グワァアアアアアア!!!!!」

城を守るドラゴンだ!!こいつとは過去にも立ち会ったことがある…。

「みんな!俺に捕まってくれ!!」

俺はそう言ってルームシスターから授かった覇剣を手に取った。すると身体が浮き上がり、ドラゴンの体の中心目掛けて自動で突き刺した。まるで俺たち4人で剣という名の乗り物に乗っているかのような状態。

「なんだこれwwwすげええwwww」

ドラゴンはあっという間に倒れて消えた。これぞチートだ…。

「ヤマモト、状況が読めないけど、早く城の中に入った方が良さそうよ。まだこのドラゴンが1匹かどうかなんてわからないじゃない?」

「そうですね…。でも、どうやって開ければいいんだろう…。」

城の目の前に立って見たものの、巨大な扉はビクともしない。するとサリアが思いついたように提案した。

「あ!じゃあ私のペンダントにお願いすればいいんじゃない?扉よ開け〜って!」

「そっか!ナイス!」

扉を開くことなんかにお願いを使っても良いのかいささか疑問だったが今はそんなこと考えている暇はない。ルームシスターいわく時間が無い。

俺はサリアのペンダントを手に取り、扉の前にかざした。

「開け!!」

ぎぃぃぃ………

巨大な扉は重々しくゆっくりと開いた。俺達は固唾を飲んだ。これから最強にして最恐の魔王と戦うんだ…。大丈夫、俺たちなら出来る…!!俺は目を瞑って城の内部に力強く足を踏み入れた。そしてそっと目を開く…。


ピュン…ピピピピ…


ん…?

「なんだここは…。」


そこには城の内部とは到底思えない、異様な光景が広がっていた。右から左へ、左から右へ…無数の光の粒が電子音と共にあちこちに飛び交っている。例えるなら宇宙…いや、電脳世界といったところか…。

そして俺はもう一つ最悪の事態に気がついた。

「あっ…あれ…?」

クルトさん、レイラさん、サリア…全員いなくなってる!

「おい!サリア!どこだ!?居たら返事してくれ!!クルトさん!!レイラさん!!」

駄目だ…どこにもいない…。

広くて薄暗い電脳世界に俺1人。魔王らしき姿も見当たらない…。

途方に暮れていたその時だった。


『SYSTEM ERROR -システムエラー-』


ブザー音と共にシステムエラーなる文字が目の前に映し出された。そして視界が暗くなる…。


「…はっ!!」

俺は目を覚ました。またもや驚くべきものが目に入った。そこは俺の部屋のベッドの上だったのだ。現実世界に戻ってきたのか…?

「よう賢治。目が覚めたか?」

この声は…。

「父さん…?」

「ああ、そうだ。おかえり賢治。どうだったか?リバイバルゲームの世界は。」

……は?

「賢治に楽しんでもらえるように、俺からのささやかな誕生日プレゼントだったんだが…気に入ってくれたか?」

落ち着け、俺。ここは現実の世界。ゲームの中ではないはず。なのに…。

「なんで俺の手にはまだ覇剣が握られてるんだ!?」

身体中に変な汗が走る。しかし父さんはブレない。

「俺は楽しかったかどうかを聞いているんだ。答えてくれないか?」

なんだなんだなんだなんだ何が起こってるんだよこれ!!!!

俺は勢いよく立ち上がってみた。

「痛い!!」

今気づいたが俺の頭に5、6本変なコードみたいなのがぶっ刺さってる!

「おい賢治、急に動くと危ないz…。」

「わかってるよ!!!!!!」

俺は頭に刺さってるコードをまとめて思いっきり引き抜いた。大量の血が噴き出す。

「ぐああああああっ!!!!」

もはや意識は錯乱している。

「賢治、落ち着け。ゲームが楽しかったかどうか答えてくれよ。」

「うるせえええええええ!!!!!!」

俺は握っていた覇剣を振り上げ、父さんに向かって斬りおろした。

ボト。

「う、うあああああああ!!!!」

父さんの左腕が落ちた。父さんは泣きわめいている。


もう、どうでもいいや。


今度は心臓を貫いてやろうと再び覇剣を振り上げた。すると部屋の外から女性の声が聞こえた。

「ちょっと静かにしなさいよ!!開けるわよ!」

女性は俺の部屋のドアを開けて入ってきた。

そしてこのザマを見てわめく。

「きゃあああああああああ!!!この人殺し!優一!しっかりして!」

女性は無残な姿になった俺の父さんを抱き抱えて泣いている。この女どっかで見た顔だが…。

ああ…出血も収まって少しフラついてきた…。

あれ……。



『…次のニュースです。先日の深夜、悲鳴と共に閑静な住宅街で起こった殺人未遂事件について、警察側は18歳の男の身柄を確保しました。捜査関係者によりますと……』


目を覚ますと白い天井が見えた。微かにする薬の匂い。ここは病院のベッドだろうか。

「あなた逮捕されるみたいね。」

近くで女性の声がし、俺は慌ててそちらを向いた。

「え……。」

俺の頰には涙がつたった。この女性…。

「…サリアなのか?」

女性は俺の顔を見つめ、困っている。

「えっと…私そんな人知らないわ。でも、あなたとどこかで会った気がするの…。」


街にはいつも通り車が走り、電車が通り、大勢の歩行者が歩道を歩き、ビルも立ち並んでいて…。ごく当たり前の世界が広がっている。しかし今見えている物は全て本物と言えるのだろうか。もしかしたら現実世界そのものも誰かによって構築されたゲームの中なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リバイバルゲーム ロア @00344012

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ