ジャパリフェスティバル(ジャガマニスト小説合作)
サリスのような人、塩
フェスティバル。
それは、ある夏の朝だった…
『…それでも、旅立ちの日。私を笑顔で見送った…』
ん…滅茶苦茶うまい声だな。
朝イチに練習場所へ着いたが驚いた。謎のフレンズの美しい声が聞こえたのだ。
『今にも、降り出しそうな、泣き空の下で…』
生憎気付いていないようだ。こっちから歩いて行った。
「ふーん、なかなか歌が上手いじゃねえか。お前は誰だ?」
「…」
謎のフレンズは少し落ち込んだ様子で去っていった。
「一体アイツは誰だったんだ…?」
今日もライブがある。マーゲイがばすで連れていく。今朝の事をジェーンにでも話してみるか。
「なあ、謎のフレンズがいつもの練習場所で歌ってたんだが、お前は知ってるか?」
「知らないですね…もしかしてフラミンゴさんやモイモイさんの事ですか?」
「違うな…少し低めで、落ち着くような、深く…」
そこにフルルが混ざりこんでくる。
「帽子のフレンズでしょー、私知ってるー」
!?あいつ知ってるのか!?
「もっと特徴を聞かせてくれ!」
「んーとね、覚えてない」
結局分からずじまいか…
そこでプリンセスが口を開く。
「そのフレンズはどんな歌を歌ってたの?」
「少ししか聴いてないからよくは覚えていないんだが、
…それでも、旅立ちの日。私を笑顔で見送った。今にも、降り出しそうな…」
「それはR&Bね。」
「お前知ってるのか!?」
「ええ、図書館で教えて貰ったのよ。」
プリンセスはいきなり歌いだした。
『素直になれず、強がりばかり。生意気なふりをして、悲しませた…。』
「そんな歌だった!」
そこでマーゲイが口を開く。
「そろそろ会場へ着きますね…!」
結構広い会場の様だ。この日の為に整備をしていたというのか。だがこの大きさだとかなり大変そうだが…
「これは野外フェスというやつですね、様々な歌手さんが歌って、皆で盛り上げる形のイベントなんです。」
マーゲイが解説を始める。長くなりそうだから放っておこう。
イベントの会場の裏には小部屋も用意されていた。「がくや」と言うらしい。
フルルが「がくや」に用意されていたお菓子を半分以上奪う。コウテイが私は良いよ、と譲る。
これからフェスが始まるらしい。今はもう夜だぞ。そんなことを考えつつ、ちょっと表を見てみる。
凄いフレンズの数だ。未だ見たこともないフレンズも多い。
博士と助手が耳栓を付けている。そして表へ出ていった。
「ファースト!ジャパリナイトフェスティバル!開催です!!」
音がでかすぎる。確かに耳栓も付けたくなるものだ。
会衆がうおおおおおお!!!、と叫ぶ。面白い。興奮してきた。
どうやらPPPは最初と最後を務めるらしい。
博士と助手がメンバーひとりひとりに耳栓を渡してくれた。
「初めとトリ、頑張るのです。鳥だけに。」
「は?」
思わず酷くあしらってしまった。まあいいか。
「オーケー!ロイヤルペンギンのプリンセスよ!」
うおっ、早いな。
「イワビーだぜ!イワトビペンギンの!だぜ!」
変になったがまあいい。
「ジェンツーペンギンのジェーンです!」
ジェーンはうまく言えてるな…。
「…?」
少しの静寂の後、観客が笑いだした。
折角なので突っ込みを入れる。
「しっかりしろフルル」
「フンボルトペンギン」
観客がいいぞー!、や可愛いな!、と言う。フルルは人気で良いな。少し羨ましい。
「コウテイペンギン、コウテイだ!」
これ最初のライブからずっと変わっていない。
「5人揃って、!」
「ぺぱぷ!」
「ぺーぱーぷー」
「ぺぱぷ!」
「ぺぱぷ!」
「ぺぱぷ!」
フルルはいつになったら治すのか…
とりあえず歌を始めるようだ。
ようこそジャパリパークに始まり、ファーストペンギン、PPPのドレミのうた、わたしたちのストーリーまでの4曲のみらしい。楽だ。しかしトリに沢山歌うのだろう。
歌い終わった。
「あー、あんまり疲れなかったな!」
「あれ以来長い間やってますからね!」
「結構PPPとして形になってきたな。歌も増えて…」
コウテイが話し終わらないうちに外ではスナネコが歌い始めたようだ。いいや、あれはスナネコと言えるのか?
どんどん進んでいくうちに知らないフレンズの曲も増えてきた。これがフェスってやつか。一度観客として楽しんでみたいなと思った。
そして、落ち着いた雰囲気になり…
「あ、あいつだよ!あいつ!!」
朝見た謎のフレンズがギターを持って登場した。
「初めましての方が多いですかね、えー、TSUYOSHIです!」
…ん?待て…?滅茶苦茶盛り上がってないか?観客がTSUYOSHIだ!!と叫んでいる。
んー?固まった方向から聞こえてくるな…100人くらいの集団が前列に居るんだがそいつらが叫んでいる。
他の奴らもつられてTSUYOSHIってなんだ…?と盛り上がり始める。
謎の男、TSUYOSHIは歌いだした。
『笑顔のあなたは何気なく現れ、やさしい瞳で見つめる…
明日のことなど何も見えないほど、この身は引き裂かれていたけど…
眠れぬ夜にはあなたが居た、そのぬくもりに満たされ…
ひかり浴びて高まる想いは、抑えきれない程嬉しい…
泣き崩れそうな喜びもいいだろう、I need you so much、終わらせないこの愛だけは…』
彼の歌声は凄いものだ。観客全員を驚かせた。綺麗で、透き通った声。深い、深海のように深いその声で観客を魅了した…
涙が頬を伝って落ちてくるのが分かった。何故だろう。コレが感動というものか…?
歌い終わったTSUYOSHIに話しかけた。
「すまん、俺知らなかったんだよ。お前が何者か。でも今日で分かったよ。とても綺麗な声の持ち主、ジャパリの、ジャパリを代表するR&B歌手、TSUYOSHIだったんだな。」
「ああ、いいですよ…えー、ありがとうございます。でも人気が出ないんですよ。なので、今日、こんなに人が集まるフェスにほぼ無料で出させてくれて、ありがとうございました。」
「このフェスに招待したのは俺じゃないんだがな。また後で聴かせてくれるか?」
なぜ売れない。
そして、トリを歌い終わり、フェスも終わった。今は午前3時みたいだ。長いフェスだったな…
少し小走りでカフェに行くとTSUYOSHIはもう着いていた。彼と待ち合わせしていたのだ。
沢山の歌を聴かせてもらい、CDも貰った。こんなに至れり尽くせりしてくれるとは。
「ありがとうな、またいつか会えたら、その時は宜しくな。」
彼はそれから一躍人気の歌手になった。ジャパリテレビでもジャパリラジオでも何度も見かけた。しかし、彼とはまだ会えていない。いや、人気になったのだから会えなくて当然なんだ。
いつかまたあの綺麗な歌声を聴かせてくれよ。
『I need you so much、終わらせないこの愛だけは…。』
ジャパリフェスティバル(ジャガマニスト小説合作) サリスのような人、塩 @Nesosub
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