杜弼⑤文官in汚職やり放題パラダイスrevisited
汚職やり放題パラダイスこと東魏、
なんだかんだ、マジメな官僚ですからね。
もう一度、
▼
及將有沙苑之役、
弼又請先除內賊、
卻討外寇。
高祖問內賊是誰。
弼曰、
「諸勳貴掠奪萬民者皆是」。
高祖不答、因令軍人皆張弓挾矢、
舉刀按矟以夾道、
使弼冒出其間、曰、
「必無傷也」。
弼戰慄汗流。
高祖然後喻之曰、
「箭雖注、不射。
刀雖舉、不擊。
矟雖按、不刺。
爾猶頓喪魂膽。
諸勳人身觸鋒刃、百死一生、
縱其貪鄙、所取處大、
不可同之循常例也」。
弼于時大恐、因頓顙謝曰、
「愚癡無智、不識至理、
今蒙開曉、始見聖達之心」。
將に沙苑の役あらんとするに及び、
弼は又た先に內賊を除き、
卻って外寇を討たんことを請う。
高祖は問うらく、
「內賊とは是れ誰ぞや」と。
弼は曰わく、
「諸々の勳貴の萬民を掠奪せるものは皆な是なり」と。
高祖は答えず、
因りて軍人をして皆な弓を張り矢を挾み、
刀を舉げ矟を按じて以て道を夾ましむ。
弼をして其の間を冒し出でしめ、曰わく、
「必ず傷うなきなり」と。
弼は戰慄して汗流る。
高祖は然る後に之を喻して曰わく、
「箭は注ぐと雖も、射ず。
刀は舉ぐと雖も、擊たず。
矟は按ずと雖も、刺さず。
爾は猶お頓に魂膽を喪えり。
諸々の勳人は身ずから鋒刃に觸れ、百死一生、
其の貪鄙を縱すは、取るところの大に處るなり。
之を循常の例と同じうすべからざるなり」と。
弼は時に大いに恐れ、因りて頓顙して謝して曰わく、
「愚癡にして無智、至理を識らず。
今や蒙は開曉し、始めて聖達の心を見る」と。
▲
天平4年(537)10月、杜弼47歳、
当然、東魏の高歓と西魏の宇文泰の戦です。
実は時系列がおかしいのですがそれは後で。
その際、
杜弼はふたたび高歓に勧めます。
「先に内の賊を除いてから外賊を討ってよ」
高歓「内の賊って誰よ」
杜弼「勲人でも民より掠奪するなら賊だし」
この前のお話を蒸し返したわけであります。
高歓はそれには答えずいきなり
兵士を向き合って二列に並ばせ、
弓を張って矢をつがえ、
刀や槍を構えてさせました。
「ケガすることはないからこの間を通ってみ」
言われて杜弼がその間を通れば、
いつ傷つけられるかと汗が流れ、
ガクブルだったわけであります。
「矢はつがえても射ず、
刀は上げても振り下ろさず
槍を構えても突きはしない。
それでもオマエは肝を飛ばした。
勲人は戦場で命がけで戦をする。
汚職を許すのは功の高いがゆえ。
通例と同じようには考えられぬ。
ドゥー・ユー・アンダァスタン・ミィィィ?」
最後『ジョジョ』っぽくな。
杜弼は平謝りだった模様です。
「ワタシが愚かでございましたー」
さて、
これは沙苑の役の前の話とされます。
実は、
記事の順序が逆になっていますよね。
時系列に整理すると、
天平(534~537)
3年正月 竇泰戦死、杜弼左遷
4年10月 沙苑の役
元象(538~539)
初め 杜弼は大丞相府法曹行參軍に着任
という順番です。
天平3年正月に
杜弼は左遷でブッ飛ばされております。
で、
元象の初めに高歓の信任を得て
この話が事実とすると、
左遷から1年くらいで杜弼は召喚され、
高歓の近くで働いていないとダメ。
かつ、
これ以前に高歓からの信任を得て
汚職官吏の追放を進言できないと、
これに先立つお話が成立しなくなる。
話としてオモシロすぎることもあり、
この逸話の信ぴょう性はちょい低い、
かもね。
▼
後從高祖破西魏於邙山、
命為露布、弼手即書絹、
曾不起草。
以功賜爵定陽縣男、邑二百戶、
加通直散騎常侍、中軍將軍。
後に高祖の西魏を邙山に破るに從い、
命じて露布を為さしむに、弼は手に即ち絹に書し、
曾て起草せず。
功を以て爵定陽縣男、邑二百戶を賜わり、
通直散騎常侍、中軍將軍を加う。
▲
次は
邙山は洛陽の北にある山塊ですわね。
毎度おなじみ高歓と宇文泰のジャレ合い。
ここで宇文泰は大ダメージを受けました。
まあ、戦勝を讃える露布を書いただけ。
注目は
これはおおむね親衛兵を率いるので、
けっこう大事な官職でありましてな。
クーデーターとかでよく現れます。
それだけ信任が高まったのですね。
で、
この後にツマらん名理の論がありますが、
一応、原文と訓読だけ挙げて省略します。
ヨミのクオリティもホワホワ。
だって、つまんねーんだもん。
▼
奉使詣闕、魏帝見之於九龍殿。
曰、
「朕始讀莊子、便值秦名、
定是體道得真、玄同齊物。
聞卿精學、聊有所問。
經中佛性、法性為一為異?」
弼對曰、
「佛性、法性、止是一理」。
詔又問曰、
「佛性既非法性、何得為一?」。
對曰、
「性無不在、故不說二」。
詔又問曰、
「說者皆言法性寬、佛性狹、
寬狹既別、非二如何?」。
弼又對曰、
「在寬成寬、在狹成狹、
若論性體、非寬非狹」。
詔問曰、
「既言成寬成狹、何得非寬非狹?
若定是狹、亦不能成寬」。
對曰、「以非寬狹、故能成寬狹、
寬狹所成雖異、能成恒一」。
上悅稱善。
乃引入經書庫、賜地持經一部、帛一百疋。
使を奉じて闕に詣り、魏帝は之に九龍殿にて見ゆ。
曰わく、
「朕は始めて莊子を讀み、便ち秦名に值い、
定めし是れ道を體して真を得て、玄は齊物と同じうせん。
聞くならく、卿は精學なりと。
聊か問うところあり。
經中の佛性、法性は一たるや異なるや?」と。
弼は對えて曰わく、
「佛性、法性、止めて是れ一理なり」と。
詔して又た問いて曰わく、
「佛性は既に法性にあらず、何ぞ一たるを得んや?」と。
對えて曰わく、
「性にあらざるなし、故に二と說かず」と。
詔して又た問いて曰わく、
「說く者は皆な言えらく、法性は寬にして佛性は狹なりと。
寬狹は既に別かれ、二にあらざれば如何せん?」と。
弼は又た對えて曰わく、
「寬に在らば寬と成り、狹に在らば狹と成る、
若し性の體を論ずれば、寬にあらず狹にあらず」と。
詔して問いて曰わく、
「既にして寬に成り狹に成ると言う。
何ぞ寬にあらず狹にあらざるを得んや?
若し定めて是れ狹ならば、亦た寬と成るあたわず」と。
對えて曰わく、
「寬狹にあらざるを以て、故に能く寬狹と成る。
寬狹の成るところは異なると雖も、能く恒に一なるを成す」と。
上は悅びて善しと稱す。
乃ち引きて經書庫に入り、地持經一部、帛一百疋を賜わる。
▲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます