杜弼⑤文官in汚職やり放題パラダイスrevisited

汚職やり放題パラダイスこと東魏、

杜弼とひつはそれに不満イッパイ。


なんだかんだ、マジメな官僚ですからね。

もう一度、高歓こうかんにアタックします。




及將有沙苑之役、

弼又請先除內賊、

卻討外寇。

高祖問內賊是誰。

弼曰、

「諸勳貴掠奪萬民者皆是」。

高祖不答、因令軍人皆張弓挾矢、

舉刀按矟以夾道、

使弼冒出其間、曰、

「必無傷也」。

弼戰慄汗流。

高祖然後喻之曰、

「箭雖注、不射。

刀雖舉、不擊。

矟雖按、不刺。

爾猶頓喪魂膽。

諸勳人身觸鋒刃、百死一生、

縱其貪鄙、所取處大、

不可同之循常例也」。

弼于時大恐、因頓顙謝曰、

「愚癡無智、不識至理、

今蒙開曉、始見聖達之心」。


將に沙苑の役あらんとするに及び、

弼は又た先に內賊を除き、

卻って外寇を討たんことを請う。

高祖は問うらく、

「內賊とは是れ誰ぞや」と。

弼は曰わく、

「諸々の勳貴の萬民を掠奪せるものは皆な是なり」と。

高祖は答えず、

因りて軍人をして皆な弓を張り矢を挾み、

刀を舉げ矟を按じて以て道を夾ましむ。

弼をして其の間を冒し出でしめ、曰わく、

「必ず傷うなきなり」と。

弼は戰慄して汗流る。

高祖は然る後に之を喻して曰わく、

「箭は注ぐと雖も、射ず。

刀は舉ぐと雖も、擊たず。

矟は按ずと雖も、刺さず。

爾は猶お頓に魂膽を喪えり。

諸々の勳人は身ずから鋒刃に觸れ、百死一生、

其の貪鄙を縱すは、取るところの大に處るなり。

之を循常の例と同じうすべからざるなり」と。

弼は時に大いに恐れ、因りて頓顙して謝して曰わく、

「愚癡にして無智、至理を識らず。

今や蒙は開曉し、始めて聖達の心を見る」と。



天平4年(537)10月、杜弼47歳、

沙苑さえんえきという戦がありました。


当然、東魏の高歓と西魏の宇文泰の戦です。

実は時系列がおかしいのですがそれは後で。


その際、

杜弼はふたたび高歓に勧めます。

「先に内の賊を除いてから外賊を討ってよ」

高歓「内の賊って誰よ」

杜弼「勲人でも民より掠奪するなら賊だし」

この前のお話を蒸し返したわけであります。


高歓はそれには答えずいきなり

兵士を向き合って二列に並ばせ、

弓を張って矢をつがえ、

刀や槍を構えてさせました。


「ケガすることはないからこの間を通ってみ」


言われて杜弼がその間を通れば、

いつ傷つけられるかと汗が流れ、

ガクブルだったわけであります。


「矢はつがえても射ず、

 刀は上げても振り下ろさず

 槍を構えても突きはしない。

 それでもオマエは肝を飛ばした。

 勲人は戦場で命がけで戦をする。

 汚職を許すのは功の高いがゆえ。

 通例と同じようには考えられぬ。

 ドゥー・ユー・アンダァスタン・ミィィィ?」


最後『ジョジョ』っぽくな。

杜弼は平謝りだった模様です。


「ワタシが愚かでございましたー」


さて、

これは沙苑の役の前の話とされます。


実は、

記事の順序が逆になっていますよね。


時系列に整理すると、

天平(534~537)

 3年正月 竇泰戦死、杜弼左遷

 4年10月 沙苑の役

元象(538~539)

 初め 杜弼は大丞相府法曹行參軍に着任

という順番です。


天平3年正月に竇泰とうたいの戦没に絡んで、

杜弼は左遷でブッ飛ばされております。


で、

元象の初めに高歓の信任を得て

大丞相府だいじょうしょうふ法曹行參軍ほうそうこうさんぐんに就いてます。


この話が事実とすると、

左遷から1年くらいで杜弼は召喚され、

高歓の近くで働いていないとダメ。

かつ、

これ以前に高歓からの信任を得て

汚職官吏の追放を進言できないと、

これに先立つお話が成立しなくなる。


話としてオモシロすぎることもあり、

この逸話の信ぴょう性はちょい低い、

かもね。




後從高祖破西魏於邙山、

命為露布、弼手即書絹、

曾不起草。

以功賜爵定陽縣男、邑二百戶、

加通直散騎常侍、中軍將軍。


後に高祖の西魏を邙山に破るに從い、

命じて露布を為さしむに、弼は手に即ち絹に書し、

曾て起草せず。

功を以て爵定陽縣男、邑二百戶を賜わり、

通直散騎常侍、中軍將軍を加う。



次は元象げんしょう元年(538)、邙山ぼうざんの戦です。

邙山は洛陽の北にある山塊ですわね。


毎度おなじみ高歓と宇文泰のジャレ合い。

ここで宇文泰は大ダメージを受けました。


まあ、戦勝を讃える露布を書いただけ。

注目は中軍将軍ちゅうぐんしょうぐんになったくらい?


これはおおむね親衛兵を率いるので、

けっこう大事な官職でありましてな。


クーデーターとかでよく現れます。

それだけ信任が高まったのですね。


で、

この後にツマらん名理の論がありますが、

一応、原文と訓読だけ挙げて省略します。


ヨミのクオリティもホワホワ。

だって、つまんねーんだもん。




奉使詣闕、魏帝見之於九龍殿。

曰、

「朕始讀莊子、便值秦名、

定是體道得真、玄同齊物。

聞卿精學、聊有所問。

經中佛性、法性為一為異?」

弼對曰、

「佛性、法性、止是一理」。

詔又問曰、

「佛性既非法性、何得為一?」。

對曰、

「性無不在、故不說二」。

詔又問曰、

「說者皆言法性寬、佛性狹、

寬狹既別、非二如何?」。

弼又對曰、

「在寬成寬、在狹成狹、

若論性體、非寬非狹」。

詔問曰、

「既言成寬成狹、何得非寬非狹?

若定是狹、亦不能成寬」。

對曰、「以非寬狹、故能成寬狹、

寬狹所成雖異、能成恒一」。

上悅稱善。

乃引入經書庫、賜地持經一部、帛一百疋。


使を奉じて闕に詣り、魏帝は之に九龍殿にて見ゆ。

曰わく、

「朕は始めて莊子を讀み、便ち秦名に值い、

定めし是れ道を體して真を得て、玄は齊物と同じうせん。

聞くならく、卿は精學なりと。

聊か問うところあり。

經中の佛性、法性は一たるや異なるや?」と。

弼は對えて曰わく、

「佛性、法性、止めて是れ一理なり」と。

詔して又た問いて曰わく、

「佛性は既に法性にあらず、何ぞ一たるを得んや?」と。

對えて曰わく、

「性にあらざるなし、故に二と說かず」と。

詔して又た問いて曰わく、

「說く者は皆な言えらく、法性は寬にして佛性は狹なりと。

寬狹は既に別かれ、二にあらざれば如何せん?」と。

弼は又た對えて曰わく、

「寬に在らば寬と成り、狹に在らば狹と成る、

若し性の體を論ずれば、寬にあらず狹にあらず」と。

詔して問いて曰わく、

「既にして寬に成り狹に成ると言う。

何ぞ寬にあらず狹にあらざるを得んや?

若し定めて是れ狹ならば、亦た寬と成るあたわず」と。

對えて曰わく、

「寬狹にあらざるを以て、故に能く寬狹と成る。

寬狹の成るところは異なると雖も、能く恒に一なるを成す」と。

上は悅びて善しと稱す。

乃ち引きて經書庫に入り、地持經一部、帛一百疋を賜わる。


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