あんぜんサイレン
安良巻祐介
サイレンが鳴っていた。
よくある赤いサイレンではなく、青いサイレンだった。
音も変だった。注意や危険を表すような、せわしなく不穏なそれではなく、色に合わせたような、鷹揚で耳に優しい響きなのだ。
ふーるーるー、ふーるーるー…とサイレンの青い光がそこらを照らし、「安全」を知らせているようだった。
駐車場なんかで、青いサイレンというかランプが点滅しているのは時折目にするが、そういうものともまた違う、何かサファイアの光に似た、美しく青い明滅であった。
それは、妙にゆっくりして眠くなるような音とともに、何度も、「安全」「安心」「平穏」を主張し続けている。
誰が鳴らしているのか、さっぱりわからない。出所も知れない。しかし、何にせよ、あまりに躍起になってそう主張しているために、だんだんと不安になってくる。
青い光が、欺瞞に満ちた何かしらのカモフラージュに見えてくる。最初は、赤いサイレンよりも安心しきっていたのが、だんだん、それよりもよっぽど、そわそわとした不穏さを感じるようになってしまった。
或いは、これも、誰かの狙いだったのかもしれない。
あんぜんサイレン 安良巻祐介 @aramaki88
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