声が重なり合う場所 -R×R-
私、本山らのが高校を卒業してから四ヶ月が経った。
今日は高校時代の後輩、
私の卒業以来ちょっと忙しくて会えていなかったので、会うのは久しぶりだ。
れぇちゃん、元気にやってるかな。
待ち合わせ場所に指定した駅の改札前で待っていると、れぇちゃんが改札を通ってこっちに走ってくるのが見えた。
「いーよぉ~! らのちゃん、ひっさしぶりー」
「れぇちゃん、おはらのー! お久しぶりです。元気でしたか?」
「元気元気ー! らのちゃんも元気そうでなによりだね」
「はい! じゃあ、あれを食べに行きますか」
「行こっか! 案内よろしくー!」
最近読んだ本や見たアニメについて語り合いながら、十分ほど歩き続けてカフェテリアに到着した。
前に一度だけ食べた、『あんこのあんこが美味しいあんこ』という謎のキャッチフレーズで話題になっているあんペーストをれぇちゃんにもぜひ食べてもらいたくて、このお店に誘ったのだ。
注文をした品を受け取り、空いている席に着く。
「その後、学校生活はどうですか?」
「うん、とっても楽しく過ごしてるよ。やっぱりあの演劇に出たあとからかな? 周りから結構声とかかけてもらって仲良くなれてさー。れぇちゃん目当てって言ったら自惚れかもだけど、演劇部員もめっちゃ増えたんだよねー」
「ふふ、それは良かったです」
れぇちゃんが初めて出演した劇をきっかけに、れぇちゃんの存在は学校中に知れ渡った。
それだけでなく、狐の男の子役として出演したことによって女子しかいない学校中の生徒から人気が出て、しまいには『お姉さま』と呼ばれる存在になったのだ。恐るべし、狐ムーブ……。
「らのちゃんはどうなの? 大学に入ってなんかやってる?」
「私はですね、バーチャルユーチューバーという活動を始めました」
「ばーちゃるゆーちゅーばー? って、なにそれ? ユーチューバーのお仲間?」
「えっとですね……」
私はバーチャルユーチューバーという存在と活動内容について簡単に説明した。
「そんな感じで、人によってはゲームをやったり、歌を歌ったり、お話をしていたりなんですけど、私は好きな本を紹介する動画を投稿しています」
「なにそれー面白そう! らのちゃんらしい!」
「えへへ。あとはですね、作家の先生や他のバーチャルユーチューバーの方をお招きしてお話なんかもしてますね」
「へーすごいじゃん!」
一人で企画や撮影など全てを行う活動はちょっぴり大変だけれど、それ以上にやりがいを感じることができるので、この活動はとっても楽しくやれている。
「えーいいなー、れぇちゃんもらのちゃんとお話したーい」
「今こうやってお話しできてるじゃないですか」
「うーん、そうなんだけどさー。放送を見に来てる人たちにウチらのいちゃいちゃっぷりを見せつけたいっていうかさ」
「お、じゃあれぇちゃんも始めちゃいますか?」
「めっちゃやりたーい。もしれぇちゃんがその活動を始めたら、一緒になんかやってくれる?」
「いいですよ。お話コラボしてもいいしね」
「ほんとに!? ありがとーらのちゃん好きー大好きーめっちゃ好きー」
「えへへ」
演劇に誘ったときもそうだったが、れぇちゃんはこちらから何かに誘うといつも前向きに乗ってきてくれる。とっても可愛くて、健気で、私のことをとても慕ってくれる。私はそんなれぇちゃんが大好きだった。
れぇちゃんに感謝の気を持ちつつ、私はあんペーストを塗ったパンを一口かじった。
いつかどこかで
そう遠くもない未来で
私たちの
ずっと逢いたかった声 キム @kimutime
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