第5話
「ハルとナツ。なんか運命感じるね。」
お昼休み、そう声を掛けてくれたのは、ナッちゃんの方からだった。極度に人見知りで入学して二日たっても誰とも喋れずに焦りを覚えていた時だった。
『ほんとだ。』
緊張して、その一言しか言えない。どうしよう、つまらない子だと思われちゃったかな。
そんなことなんか気にしていないように、ナッちゃんは続ける。
「よかったらさ、お弁当一緒に食べない?今まで他のクラスにいる同じ中学校の子と食べてたんだけどさ、やっぱり一緒のクラスの子と食べたいなーって。」
既にグループがぽつりぽつりと出来ていたことを心配していた私は、嬉しくて何度も何度も頷いた。
「私、藤田夏乃。よろしくね。」
お弁当を広げながらナッちゃんが言う。
『よろしく、藤田さん。』
「そんなにかしこまらないでよ、ナッちゃんって呼んで。中学からそう呼ばれてたから。」
そう言ってナッちゃんは笑っていた。
『わかった、ナッちゃん。』
「ねぇ、ハルちゃんって呼んでもいい?ナッちゃんとハルちゃん、なんか素敵じゃない?」
私が頷くと、ナッちゃんはまたにっこりと笑った。
お互いクラスに知り合いがいないことだったり、誕生日の月が一緒だったり、話題は尽きなかった。人見知りなのに、そんなことを忘れるくらいに楽しかった。
「え、中学校の時美術部だったの?」
晩夏に鳴く 里見 祭 @matsuri_satomi
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