千年の星

作者 長門拓

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★★★ Excellent!!!

ふと目を覚ます。
布団の中。なにか夢を見ていたような気がする。ぼんやりと、頭の中に映像が浮かぶ。カーテンを引いてまだほの暗い空を眺める。蒼にスライスされたその空にはまだ明けの明星が輝いている。
どんな夢を見ていたっけ。
ああ、この子が出てきて……。あれ、どうして彼女はわたしの元を去っていったんだっけ。その後、道でなにかを拾った気がする。その道って……どんな道だっけ。
さっきまで覚えていた夢の内容は、わずか数分の間に空へと放たれていく。大冒険、恋心、切ない別れ、行ったこともない不思議な空間。覚えておきたいのに、脳の中から、サイダーの泡が抜けるようにそぎ落とされていく。
そんな経験、ありませんか。

本作は、筆者の見た夢をそのまま文章に変換したようなつくりになっています。
だからこれからこの物語を楽しむ方にぜひ伝えておきたい。
「夢の世界」
これをイメージしながら読むと、何倍もおもしろい。

本作は主人公マリーが二つの『時代』を行き来する、というシナリオになっていますが、「どうしてそうなったか」については行中、あるいは読者の想像に委ねられるようになっています。「なぜ」「なぜ」と貪欲に求めてはいけません。それはこの物語の要点ではない。「ただそこにある事象」を楽しむ。夢って、起きてしまえば同じ世界に戻ることはできませんよね? だけど、起きてからもう一度同じ夢を見られる喜びと同種の幸せが、本作には描かれています。

そして『時代』の行き来が帰着する先はやっぱり、人と人との関係。
AD1,000のマリーは誰とどんな未来を生きたのか。
AD2,000のマリーはどんな未来に向かって歩いたのか。
それぞれを対比しつつ想像しながらエンディングを迎えて下さい。
読み終える間際、あなたは二つの世界を知っているからこそ、夢が消えていく哀しさをあらためて覚えることでしょう。

タイトルは、『千年の星… 続きを読む