第3話 ブサイクと昼休み

 「この学校つまんないよぉ」



 昼休みもあと半分くらいというところで、まるであくびをそのまま喋り声にしたかのような声で話しかけられ俺は振り返った。


 後ろの席の変わり者が登校してきたらしい。



 「永井、おまえいま学校きたの?」


 「おぁ、そう。なんか頭痛いねぅ」



 あくびのような話し方を続けながら、永井はボリボリと頭をかきむしる。



 この学園は1クラス30人なのに対してどのクラスも男子は5人未満しかいない。


 そして男子個々が抱える特殊な問題が要因になってこの学校に来ているらしいので、変人ばかりである。


 目の前の男もその代表例というわけだ。


 今にもフケが落ちそうだったので不快になり、視線を前に戻した。



 「あ、筆箱ねえぉ! ブサ山鉛筆せのぉ!!」


 「あのなぁ……人に何か頼む態度じゃねぇだろそれ」


 「ふぉ? じゃあシャーペン貸せぅ! ブサ山!」


 「…」



 先日の事件から俺はブサ山になった。


 別に冗談でブサイクいじりをされることはもはや不快ではないが、永井の、人を心底バカにしたような態度と言葉遣いは不快である。


 なにより今日は午前中ずっとブサイクについて考えていたのでいい気分ではないし、こいつはムカつく&汚いので筆記用具は絶対貸さない。



 俺が女子のグループに気持ち悪がられていた経緯については、憤る田島を制止しようとしていた畑中という男子から教えてもらい判明した。


 俺の話題を出したのはリーダー格の人物ではなく、例の女子グループメンバー1人の黄木優花という子で、俺の机の右斜め前の席の生徒である。


 黄木の落とした消しゴムが俺の席の近くに転がったのかわからないが、拾った人が俺の物だと判断し机に俺の机に置いてしまったため、その消しゴムを俺が彼女の机に返したことが原因だったらしい。


 普通に意味不明である。



 「じゃあマイネーム貸してぅ!」



 そもそも黄木自身の不注意で消しゴムを落としたわけだし、俺なんかより学校の床のほうがよっぽど汚い。


 だが、ブサイクがこういう扱いを受けるのは宿命なのである。


 その後も特に俺がいじめの対象にされることもなく、多少悪口の野次を飛ばされる程度で平穏に過ごせているのはありがたいことであるのかもしれない。 



 「コンパスでもいいよぉ、しょうがないからぉ。」



 そして少なからず田島に対して責任を感じていた。


あいつが隔離行きになった原因を作ったのは自分で、俺をかばっての発言であったのには違いないからだ。


 通報によって男子が隔離行きになったことはすぐに学年中にに知れ渡った。


 5クラス存在する一年生の中でも初めてのことらしく、学年の男子は入学当時よりも借りてきた猫のようにおとなしくなってしまっているということだ。


 反対に田島を通報した張本人であるグループのリーダーである赤井紗理奈は前よりいっそう態度が大きくなり、グループの規模も倍程度に拡大していた。



 「芯!芯だけぅ!」



 うるさいのでインクの残っていない赤ペンを永井に渡した。

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顔面偏差値底辺の俺×元女子校 @ujindoku

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