第2話 ブサイクと悪口
人間は異性に恋をし、愛を誓うという。
その際に決め手となるものの種類や重要度は人それぞれ様々であろうが、相手の容姿を全く考慮しない人間は殆どいないであろう。
ましてや芸能人やアイドル、漫画やアニメのキャラクターに焦点を当てれば、その見た目のかっこよさ、或いはかわいさが人気の決めてとなることは明白だ。
服装、体格、髪などの要素に加え最重要項目の『顔』からなるルックスは、異性からの好感度に強く関わっているのである。
これは国、世代、性別、個人等で差はあれども誰もが間違いなく捨て置けないものであり、中でも人間同士の関係において「顔」は重要な役割を果たす。
顔面は誰もが殆どの場合露出しており、顔自体がその人の印象を決める唯一無二の個性になっている。
というのも表情の変化を見る、見てもらうことは人間のコミニュケーションにおいて重要なもので顔を合わせて会話を交わすのはごく当たり前であるため、出会った人間の顔を見ること、そして自分の顔も相手に見られることになるからにほかならない。
後ろを向きながら会話ような人間を少なくとも俺は知らないし、誰かを思い出すときはその人の顔を思い浮かべる。
1時間目の授業は移動教室だったので教室へ戻るために廊下を歩きながら、一人でいつものように自分がブサイクであることについて考えていた。
「ブサ山の顔見てあれ!」
「ゲ、ヤバ……」
しかしこの顔というものには見たときに感じる良し悪しが存在する。
人間不思議なもので良いと感じる顔のパーツや輪郭、バランスなどが存在しており、パーツに不規則や左右非対称、極端な大小がある顔は好まれない。
整っている規範的な顔は美男、美女ともてはやされるが、反対に整っていなければ不細工と嘲笑われる。
そして「ブサイク」という個性は、持つ人の人生に大量のデメリットをもたらす。
その影響が顕著に現れるのはブサイクと呼ばれる人間が異性と関わる場合で、個人差はあれど異性はブサイクの顔をみてあまり良い印象を持たない。
「なんか臭そうだよね。ブサ山って。」
「わかるー!!」
ましてや恋愛対象になるかどうかという面で考えれば、異性からの評価が顔が整っている人間と比べて下がるのは当たり前という現状がある。
性格でパートナーを選ぶという人間も、同じくらい性格が好みで話も合う人間が二人たとして一人はブサイク、もう一人はそうでない人であったなら後者を選ぶのは明白であろう。
教室にたどり着き黒板に向かって左端、後ろから2番目の俺の席座る。
2時間目の授業が始まるチャイムが鳴った。
顔以外にも個人の印象を決めるルックスの要素はあるが、どれもある程度努力で払拭できたり、別角度のアプローチからどうにか好個性へと変えることができる。
しかしやっかいなことにブサイクというものは自分の強みとすることが非常に難しいのである。
加えて顔がどうなるかは生まれたときにほとんど決まっており、自分の行動で大きく変わるものでもない。
整形などでお金をかけて自分の顔を改変する手段もあるが、賛否両論でありこの行為自体がその人の悪印象につながる場合も多い。
俺はシャープペンを回しながら自分に言い訳を続ける。
つまりブサイクな人間は生まれたときから人生に高いハードルが設置されているのだ。
逆に美男美女はハンデを貰っていて、イージーモードな人生を生きている。
俺はそう思って生きてきた。
ーーそしてここは私立平桜花学園。女子のための学校である。
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