私のチョコレートは不思議な味。

つるるん 。

私のチョコレートは不思議な味。

無理だ…。


ここまで来たけどやっぱり無理だ。


でも今日しかない。

せっかく作ったバレンタインチョコ、今年渡さないと一生ムリ。

4月には、お互い別の大学に行くんだから。

この3年間の片想いに決着をつけるのは今しかない!


…。

でもそう思うと、余計にプレッシャー…。


えーっと、とにかく「もらってください!」って言って渡すだけにしよう。


なんか告白とか、何か話そうとか考えないで、「もらってください」の8文字だけ言えばいいんだから。

日本人だから日本語8文字くらいは言えるでしょ!私?


もうそろそろ部活終わって、ここを通るはず。

それにしてもまだ寒いな、早く来ないかな…。


いや!早く来られても心の準備があるし!


ってか、来たー!!


えーと「もらってください」「もらってください」…。



よし!



「あの!」


…勇気を出して塀の角から飛び出したところまではよかった。

ただ、距離感をミスって「あの!」と同時に彼にぶつかってしまう失態…。

その上、チョコが私の手から逃げ出した。


『バキッ。』


何が起こったかわからない様子の彼と、間違いなく無事ではない悲鳴をあげたチョコ。


お疲れさまでした、私…。


意識が飛びそうで、もう立ってられなくて、座り込むしかなかった。


「大丈夫?」

彼の声で視界が戻った。


彼の手には、私が落としたチョコ。

こんな形で彼が手にするとは思わなかったけど…。


「それ、チョコ…あげる。」

もう呆然としてたおかげもあり、「あげる」ってすんなり言葉に出来た。

もういいや、渡せればそれでいいや。


「誰かにあげる奴だろ?ちょっと中身大丈夫か?」

そう言って中身を確認してくれる。そういう優しい所が好きなんだよ。

でもあなたにあげたかったんだよ。

ほら見て。ハートのチョコにあなたの名前書いてるでしょ?


…もう今は真ん中から綺麗にギザギザで割れたハートのチョコだけどね。


そりゃそうだよね、笑うよね。ハートが割れたチョコって意味わかんないよね。


「ちょうどいいじゃん。半分こして食べようぜ」


…はい?何を言ってるの?


ぼーっとしている私の手を引いて彼が立ち上がらせてくれた。


「よくわかんないけどさ、付き合うってことは『うれしい』とか『かなしい』を半分こするってことだろ?だからコレ半分づつ食べようぜ。」


私が作ったチョコ。まさか私も食べるなんて思わなかった。


甘くはないけど体がほっこりするような、ちょっとしょっぱくて不思議な味がした。

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私のチョコレートは不思議な味。 つるるん 。 @tsuru-run

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